理 事 会 レ ポ ー ト  特別会計措置で建築家資格制度試行       理事 森口 雅文

第129回理事会は通常総会を1カ月後に控えた4月23日にJIA館で開催された。今回は報告事項6件、審議事項4件が討議された。開会にあたって大宇根弘司会長から、通常総会議案を審議する中で、2002年度1カ年の総括と、次年度の方針決定の議論を願いたい旨のあいさつがあった。

 冒頭高野孝次郎常務理事より、今後の理事会議事録の取り扱いについての説明があった。これまで理事会議事録は次に開催された理事会で承認を求めてきたが、前回の臨時理事会の分から、理事会開催後、事務局で議事録案を作成して、各理事に開示し、期限付きで確認をお願いし、各理事からの回答により加筆訂正したものを次の理事会までに再度各理事に開示し、異議がなければ次の理事会当日に議事録署名人の署名をもって承認されたものとし、改めて理事会には諮らないとするもので、この方式を特段の異議もなく承認された。
 報告事項の活動報告では、まず高野常務理事から一般活動の報告があった。表彰委員会では、2003年度から新たな賞として「地域賞」の創設に関することを検討していること、4会会長会議はこれまで建築設計者の資格制度やCPDなどを協議する場として、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築学会とJIAの4会の会長で構成されていたが、次回からBCS(建築業協会)の会長も参画して5会会長会議として開催されることになった。以上が特筆すべきことと言える。倫理規定・職能原則委員会の太田隆信委員長からは、倫理規定・職能原則見直しに関する中間報告があった。同委員会では他分野の倫理規定などに関する資料を収集し、その内容を検証する一方これらを踏まえて現行の「倫理規定」と「職能原則」の内容を見直すとともに会員にもまた社会からもわかりやすい形で示すことを考え、第一段階の案のとりまとめにかかった。その内容は、建築家憲章ともいえる「職能原則」と建築家法とも言うべき「倫理規定」と「行動規範」を3分割してとりまとめ、なるべく具体的でわかりやすい内容のものになった上で、通常総会後の会員懇談会で案を提示し協議の場をもち、秋の滋賀大会で成案したものを発表したい旨の報告があった。設計者選定法推進会議に関しては、小倉善明副会長から「設計者選定法」の確立を目標として特別委員会を発足させ、自ら委員長となり、議員も交えた外部との幅広い活動をめざすことの説明があった。担当理事報告では、兼松紘一郎理事から、一つは既存建築物の持続的活用に向けた懇談会企画書の説明があり、懇談会発足の趣旨説明があった。これまで歴史的建造物(50年以上のもの)の取り扱いはあるが、戦後のものの取り扱いをどうするのか、5会会長会議で呼びかけたいとのことであった。次に社会向け支部活動推進ワークショップの案内があり、その第一回目が通常総会の前日に開催されると報告された。この企画は第128回理事会で審議された担当理事会制とも関わる試みであり、本部の委員会や部会でとくに社会向けの活動をするものには支部や地域会でもそれを支援する形でその活動を推進させようとするものである。
 支部長会議報告は今回は僊石友秋中国支部長からあり、総会前日に開催予定されている社会向け支部活動推進ワークショップへの積極的な参加要請。大宇根会長からの要請として、資格制度やCPDに関して、支部、地域会での建築関係他団体との話し合いの推進。設計者選定方式QBSの案に対する支部としての意見を出すよう要請があったことなどが報告された。その他支部の活動の様子を資料として残すよう鮎川透九州支部長から提案があった。JIA2003滋賀の動き及びJIA大会2004東京の準備に状況については、まず第5回近畿支部大会/JIA大会2003滋賀について出江寛近畿支部長から報告があった。テーマは「水と暮らしと建築」―建築家は地域の創造にどう関わるか―で、10月10日の理事懇談会を皮切りに同月12日までの3日間にかけて開催される。近畿支部大会の基調講演は滋賀大学学長宮本憲一氏の“環境について”を予定している。大宇根会長からは同大会時にも社会向け支部活動推進ワークショップの併催の要請があった。JIA大会2004については松原忠策関東甲信越支部長から企画方針(案)の説明があった。これまでの大会と異なり他団体、建築業界との交流を積極的にはかり「建築」に関する大会にしたい。CPDのこともあり、期間も5日間位(2004.10.6〜10予定)とし、最初の3日間は市民向け、4日目をこれまでの大会、5日目は六本木グランドハイアットに1,000人集め納会とする。会場は借りることができれば国立オリンピック記念青少年総合センターではどうか、大会規模は1,000人、予算は40,000千円とのことであった。
 審議事項では、新規入会者、休会者承認及び退会者承認の件は、高野常務理事より入会者15人、休会希望者は3年目まで認めることとして21人の説明があり、すべて承認された。また退会者は68人が報告された。
 なお本日承認の入会者の入会金に関しては会費規定通り36,000円とし、通常総会での議決によって減額が承認されれば返却する旨の説明があった。委員会構成については高野常務理事より2003年度委員会構成(案)が説明された。承認は2003年度通常総会後の臨時理事会に諮られることになった。なお事業委員会は2002年度は教育関連事業推進委員会に統合されたが、2003年度は積極的に事業活動を推進するため再び独立した委員会とすることとした。2003年度CPD参加促進の件では、柳澤璋忠専務理事より2002年度CPD参加者データの報告があった。これはCPDを本格実施して1カ年、CPD事務局でまとめた4月22日付資料で、単位取得会員(0.5単位以上取得した会員)は全国平均で39%(海外を除いて最低は関東甲信越支部30%、最高は沖縄支部89%、東海支部48%)、2002年度の必須単位である12単位を取得した会員は全国平均で14%(最低は関東甲信越支部9%、最高は東北、北陸支部36%、東海支部18%)であった。なおこのデータは認定プログラムに関してほとんど入力済であるが、自主研修に関しては入力済は2,889件、入力待ちのものが4,000件あり、6月にならないと参加者の内容が判明しないとの説明があった。
 今実施されているCPDはあくまでもJIAの会員資格の要件としてのものであるが、いずれ次年度試行を予定している建築家資格制度の登録更新の要件ともなろうが、混乱を避けるため当面は会員資格の要件であることをあらためて明確にしておく必要があることを痛感した。そこで各支部のCPD実施の現状を各支部長に報告願った。下村憲一北海道支部長は、「成績はよくない。あまり大きいことは言えないが、これまで何度か支部でもプログラムを認定できるように申し出たが、CPDのレベルを守るためか本部での認定しか認められなかった。そのため時間的制約で認定プログラムを自主研修にせざるを得なかったものがあり、支部で認定できればこれは改善できるように思う」。若松信行東北支部長は、「支部長の顔を立てて参加するように頼んでいる。どこかで集まって一挙に集中取得できる方法を工夫している」。水野一郎北陸支部長事務代行からは、「会員同志が顔見知りであり、主宰者会員を対象に日常の活動がCPDになるような工夫をしている」。松原関東甲信越支部長からは、「最悪の成績であるが、支部会員2,400人の内地域会に所属する会員はほぼ他の支部と同じレベルであろうが、東京のLF所属会員が認定プログラムの価値を認めていないところが問題のようである」。上村貞一郎東海支部長からは、「三重地域会の状況を言えば、最近CPDの話をすると嫌がられる。試行のときの方が成績が良かった。最近悪くなってきた原因として、何のためにやるのかという認識が欠けているようで、目的をはっきりすれば改善されるのか。次年度は必須単位が24になるが、まだ手立ては見つかっていない。啓蒙の方法すらわからない状況である」。出江寛近畿支部長からは、「今のところ近畿の数字は低いが、滋賀大会で稼ぐつもりでいる。6月に建築家資格制度を立ち上げれば東海支部の心配は払拭できるのではないか。近畿は楽観している」。僊石中国支部長からは、「岡山が一番熱心で他の県はプログラムも少なく成績は悪いが、他団体との共通プログラムを考えて促進をはかるつもりである」。上田堯世四国支部長からは、「予想よりよい成績である。はっきりとした意識を持たないと促進はむつかしいように思う。資格も世間が認めれば進展するであろう」。鮎川透九州支部長からは、「地方の方が大変と言われていたが、実際は都市部の方が大変である。それはプログラムの数ではない。やはり声をかけあってできることが大きい。手続きを簡素化して簡単に実施できる仕組みを考えたい。資格制度との連携をもたせるのも一つの改善方法ではないか」。山城東雄沖縄支部長からは「昨年の大会でCPDは普及した。しかし自主研修の低調が気がかりである。士会も始動している。登録のシステムをきちんとすれば、促進できるように思う。CPDの申請を支部で一旦まとめる方法もあるのではないか。2年目の24単位はむずかしくない」。最後に坂本克也副会長から一言「本来CPDは自主研修、自主申告(申請)を基本と考え、それをフォローするツールをきちんと考える必要があるのではないか」との発言でCPD参加促進の件はしめくくられた。かねてよりの私の主張の通りCPDはやはり自主管理研修、自主申告(ラジオ体操方式の)以外の方法は考えない方がよいと思うが、いかがなものか。2003年度通常総会議案の件では、まず通常総会当日のスケジュールを確認後、議案の審議に入った。第1号議案2002年度事業報告および収支決算に関する件は、各理事が一週間以内に確認して返答することとし、決算についてはとくに柳澤専務理事から次のような説明があった。2002年度単年度では5,624,647円の赤字で、繰越収支でも1,750,261円の赤字となり、これはJIAとしてははじめてのことで、数字上は粉飾処理も可能であったが、問題を先送りしないために赤字決算とした。この赤字は2003年度中に戻すように予算計上した。第2号議案2003年度事業計画及び収支予算に関する件は、本日の理事会に先立ち各理事に資料が配布されていたが、特段の異議もなく、大宇根会長からは2002年度のJIAを変えようの活動はそれなりの効果があったように思っている。会員減少には歯止めがかかったとは言え、若い会員の入会が少ない。そのことを考えて2003年度の活動方針をまとめた旨の説明があった。また柳澤専務理事からは会員数が年々5%減っている現実を反映した予算を立案した旨の説明があった。第3号議案入会金の件は河野進副会長から2002年度の入会金減額の措置により、会員減にブレーキがかかった。とくに若い人の入会が増えた。よって暫定でなく、入会金を現行36,000円から6,000円に減額改定する案の説明があった。私からはまず「第2号議案ではすでに予算で入会金を減額計上しているにもかかわらず入会金改定の審議が第3号議案になっているが、審議の順序が逆ではないか」と「入会金については前回臨時理事会で、今後ファンドとしての取り扱いについてもう少し時間をかけて検討するとの説明があったばかりなのに、これは会員への欺瞞ではないか」2点を指摘した。審議の順序についてはCPDのときにも同様のことがあったので、調査する旨の高野常務理事から回答があった。下村北海道支部長からも、「会員と会費種別の検討を継続審議にしたとのと同様に入会金問題も同様に扱ってもよいのではないか」との意見に、河野副会長からも「入会金だけそのまま延長させるのは問題である。会費に関して先送りしたと同様入会金減額もそのまま先送りしてはどうか」。私から議案の2003年度以降改定でなく、2003年度に限り減額を継続する案を提案、結局@現行通り36,000円A2003年度以降36,000円を6,000円に改定(原案)B2003年度に限り減額を延長する、以上3案を挙手により採決し、1:0:21でBの2003年度に限って入会金減額の延長が承認された。ここで第1号議案および第2号議案を採決、賛成多数で承認、つづいて第4号議案地域会設置の件、第6号議案終身正会員の件、第7号議案名誉正会員の件、(第128回理事会で承認済み)、第8号議案役員選任の件が一括審議され、賛成多数で承認された。最後に第5号議案、建築家資格制度試行の件が審議された。議案に関しては前回の臨時理事会ですでに議決されており、今回は議案に添付される提案趣旨に関して審議され承認された。審議の中で、出江近畿支部長から「最終的には士会連合会との制度の整合を唱えているが、本当に整合ができるのか。JIAとして検討しておく必要がある」。また、私からは「建築家資格制度の試行の財政的処置つまり一般会計とは別に特別会計で実施することは表明しておく必要があること」を指摘した。松原関東甲信越支部長からは、「建築家の名称を検討しておくべきである。日本建築士会連合会は専攻建築士、JIAは登録建築家でよいのか」との発言に河野副会長からは、「名称のことは先に送りたい」旨の回答があった。橋本修英オブザーバーからは資格制度の予算案が説明され、大宇根会長からも特別会計を設置し、当面の資金5,000千円は広報積立金(ファンドとしての入会金)を一時流用する。なお同資金は2004年度中に返済する予定との説明があり、審議の結果、特別会計の設置と広報積立金の一時流用を承認した。このあと途中から出席された岩村和夫理事から担当理事報告として環境データ資料の試行依頼と国際関連報告があった。2011年UIA大会を日本に誘致するには、2005年のイスタンブール大会で手を挙げる準備がそろそろ必要であるとの報告があった。
(2003・4・29)