理事会レポート

JIA建築家資格制度試行に向け ようやく2003年度通常総会に上程       理事  森口雅文

 臨時理事会は3月26目に予定されていた支部長会議を急遽変更して開催され、去る2月26日に開催された第128回理事会で審議未了となった建築家資格制度試行に関する事項と、会員・会費種別の改定に関する事項を2003年度通常総会に上程することの可否を含めて審議された。建築家資格制度試行に関しては一歩前進、会員・会費種別改定に関しては足踏みの状態を決議して、審議は終了した。

 大宇根弘司会長が坂本克也副会長を議長代行に指名し、臨時理事会がはじまった。まず前回理事会で諮られるべき12月18日に開催した第127回理事会の議事録の承認が上程され可決された。
 新規入会者承認の件は、昨年12月の理事会では、2月の理事会で承認を受けた分までを入会金減額対象とする旨の説明があったが、改めて今臨時理事会承認分までを2002年度入会として取り扱いたい旨の説明があり、17名の新規入会者を2002年度入会者として承認した。

報告事項では、
2月の理事会以後の資格制度に関する動きが高野孝次郎常務理事から報告された。3月10日に建築士会連合会とJIAとの第2回目の協議の場がもたれ、建築士会連合会の実績認定に関する資料の提示があり、次回はJIAの資料を提出することになった。またCPDに関しては両会のCPDの共通化が基本的に合意された。3月13日には資格制度推進委員会が開催され、本日の臨時理事会で審議されるべき事項を検討した。

審議事項では、
1.JlA2003年度通常総会提出の建築家資格制度試行に関する議決事項については、冒頭大宇根会長より「12月の理事会以後支部から資格制度の試行に関して多くの意見をいただいたが、理事会での理解が一般会員まで十分に達していないように思える。これから各支部で開催される総会で十分議論して理解を深めてほしい。とくにJIAの会員資格と建築家資格との区別がついていないように思えるので、ぜひ“はじめに"(『建築家』5月号に掲載予定している建築家資格制度試行の前提を認めたもの)を確認してほしい」と会長自らその原稿を精読された後議事に入った。まず、建築家資格制度についての審議事項(総会議案として提出に向けての議決内容)が説明された。

1)建築家資格制度権進の基本方針
@建築家資格制度の試行にあたってはJIAの定款改正は行なわない。
A試行の対象はJIA正会員とする。
B試行期間は2年間を目途とする。
C試行の対象としては、会員の登録のみならず非会員の登録も含める。
ただし、試行期間における非会員の登録は実務訓練生とする。
D認定機関としては、第三者機関の設置を目標とするが、
試行期間にあたっては第三者性の強い機関をJIA内部に設置する。
2)建築家資格制度確立に肉けての段階的目標設定について
    第1段階 資格制度の試行を行なう。
    第2段階 資格制度を社会的制度として定着させる。
    第3段階 資格制度を国家資格制度(法律的制度)とする。
3)試行期間における具体的認定手法は次の2種類とする。
(基本方針を踏まえた確認事項)「実績認定コース」および「実務訓練認定コース」を実践・検証する。


議案としては以上で、とくに赤色部分は2月の理事会の審議を経て変更された部分である旨の説明があった。これでやっと12月の理事会で決定された基本方針が確認されたことになったが、その間の各支部での検討が大いに議案に反映されたものと思われる。理事会ではこの審議事項を逐条審議し、挙手による採決を繰り返して次の通りの総会議案としての成案を得た。
 まず会長執筆の「前文」(詳細は会長一任)ではJIAが建築家資格制度の確立に向けて歩みを進めるにあたり、社会的制度、他団体との調整、財政的問題などを言及した上で、その制度のグランドデザインを示し議案としては次の2項目とする。

1)建築家資格制度確立に向けての段階的目標日程について
    第1段階 資格制度の試行を行なう。
    第2段階 資格制度の社会的制度として定着させる・
    第3段階 資格制度を国家資格制度(法律的制度)とする。
2)建築家資格制度の試行の基本方針
 @建築家資格制度の試行にあたってはJIAの定款改正は行なわない。
 A試行の対象はJIA正会員およびJIA実務訓練生とする。
 B試行は2003年度内より2年間を目途とする。
 C試行期問中は第三者を加えた認定機関をJIA内部に設置する。
 D試行期問においては、「実績認定コース」および「実務訓練認定コース」を実践・検証する。


 以上の通りで逐条審議の様子は省略するが、審議前と審議後の議案を比べて審議の内容をご理解いただきたい。

2. 会員・会費種別の改定に関する提案事項についてでは、河野進副会長から、2003年度通常総会への議案提出は見送り、総会へは協議事項として、これまでの会員種別・会費種別等検討特別委員会による見直し状況について中間報告を行なう基本方針の提案があった。会員種別・会費種別等検討特別委員会の答申では、会員種別と会費種別も併せて一律とする方向の改定が12月理事会に提案されたが、その後、企画運営会議で各支部からの意見やLF懇談会からの要望などの意見を踏まえて情勢分析を行なった結果、委員会提案の内容についてまだJIA内部で十分な議論が重ねられておらず、改定の趣旨が周知徹底されたとは言えない現状にあることと、この状況で改定提案を総会議決した場合は、「一般会員」に相当の影響があり退会者の急増につながる可能性が危倶されることなど、2003年度通常総会に議案として提出することを見送ることにしたいとの提案説明があった。また総会後のステップとしては、全会員に向けてのアンケートの実施などを通じて分析を進めるとともに見直しの主旨の浸透をはかり、その成果を見定めて改定に関する臨時総会(書面表決)による2003年度内の議決の可能性などについても継続検討を進める旨の説明があり、審議に入った。
 阿部一尋理事からは「会員減少を覚悟して手をつけるべきで、本当にJIAはやってゆけるのか」、
 上村貞一郎東海支部長からは「原案通りで上程すべきである。来年再議しても同じではないか。2003年度議決、2004年度から実施でよい」とする意見に河野進副会長からは「1/3の一般会員の声が届いていないので手続きを踏んだ方がよい」との説明があった。
 松原忠策関東甲信越支部長からも、「主宰者と一般会員、教職者の取り扱いなど結論が出ていない」。
 若松信行東北支部長からは、「資格制度がはっきりしないとやりにくいので、2カ年の資格制度の試行中に実施すればよい。
 私からはもともとこの問題は現状のJIAを存続させることを前提に議論されてきたもので、資格制度の試行が定款改正をしないでJIAの正会員を対象とすることに方針決定した以上、委員会の答申通り上程すべきである」。
 井上守理事からは「AIAや医師会の例を見ても会費と資格制度とは関係ない。試行期間とのからみで見送ってはどうか」。
 崔康勲監事からは「今ここでJIAは何をやるのか。1/3の若い人の意見を汲み取るために執行部の提案通り少し待ってはどうか」との意見が表明された。
 さらに河野副会長からは「2002年度の入会金減額の効果は大きく、次年度も継続してはどうか。活動費が減ったわけではない。入会金のファンドとしての取り扱いにはもう少し時間をかけて検討してはどうか」との発言に高野常務理事からは「JIA発足当初6年くらいは入会金はファンドとして積立て、国際交流基金やまたビル入居の資金など特定の費用に使っていたが、この5年は一般会計に繰り入れて使っているので最終的には5,000千円しか残っていない」との説明があった。
 大宇根会長からは、「2002年度の事業計画に入っていたので、できれば1年で結論を出したかった」との発言の後、
 内藤廣副会長からは「結論の出しにくい問題で先延ばしはやむを得ないが、結論の出し方だけは決めておいた方がよい」。 また鮎川透九州支部長からは「CPD、資格制度とむずかしい状況にあり、めざすべき組織像が必要で全体のスケジュールを考えておくべきである」との発言の後、採決に入った。

 @提案通り見送る。A提案通り見送るが、2003年度内に理事会決定し臨時総会に諮り2004年度実施する。B予定通り上程する、以上3案が諮られ、挙手により採決の結果、0対18対2でAの提案通り見送るが、2004年実施案が可決された。その後崔監事や出澤潔理事からJIA友の会やJIAサポートなどJIAを支援する会員の検討の申し出があり、大宇根会長からは検討する旨の回答があった。

 協議事項は小倉善明副会長から機関紙『建築家』0305号の特集内容について説明後、本日審議された両テーマについて広く意見の交換が行なわれた。主な発言は次の通りであった。
 内藤副会長から「大宇根会長の“はじめに"には大学卒業者を対象としているが、大卒以外でも建築家になる人が出てくるのでそのような人にも門戸を開く道(バイパス)を設けておいては」。
 橋本修英オブザーバーからは、資格制度の認定機関の説明、とくに本部と支部に設置される建築家認定評議会の説明と、財政上の説明があり、初期登録費20千円、運営費は毎年5千円、5年ごとの更新費15千円の検討案が示された。
 下村憲一北海道支部長からは、「認定機関に関しては納得できるしコストもその程度必要ではないか」。
 若松東北支部長からは、「いよいよ資格制度を支部でやらねばならないことがわかった。25千円はやむを得ないであろう」。
 松原関東甲信越支部長からは、「実務経験コースはかなり最後まで問題が残るのではないか」。
 上村東海支部長からは、「支部としては大変である。認定が学会や士会とうまくやっていけるのか。また、試行する資格制度がどれだけ社会的信頼が得られるかが心配である。JIAの会費が改定されないので、試行はその範囲内でやらねばならない。CPDの履修率からみても登録者は5千人の会員の内3千人位か?」との発言に
 大宇根会長からは「JIA正会員全員が試行するので、全員参加と決めている」。
 出江寛近畿支部長からは「東海支部の危倶は近畿では感じていない。新入会員は増えつつあり、退会しても戻ってきている。資格制度を周知すれば、会員は増えるのではないか。手応えを感じている。この際、清濁併せ呑んで建築家資格制度の立ち上げが必要である」。
 倦石友秋中国支部長からは、「中国支部は近畿支部のCPDに参加し、近畿の支援で勉強している。他団体との関係は極めて友好的である」。
 上田尭世四国支部長からは、「全員がついてゆける制度になってほしい」との要望が出された。
 鮎川九州支部長からは、「全員参加であるがいろいろな会員がいることも事実、誰が建築家を認定するかが問題で、地方では他団体と人事面で重なっているので、他団体の人が本当の意味での第三者と言えるのか疑問である。JIAは全国組織であ
り認定もやはり全国区か。顔の見えることの良さと悪さがある」。
 山城東雄沖縄支部長からは「提案通りでよい」。
 西川英治北陸副支部長代理からは「支部の役割は実質的にそれほど増えないように思う。また支部の建築家認定評議会の内外の人数構成が本部とは逆になっているが、支部でも外部の人が多い方がよいのではないか」。
 内藤副会長からは「試験で不合格にするつもりがあるのか。顔が見えるというが、その覚悟はしておかねばならない」。
 大宇根会長からは、「実務経験で厳密に判断する。認定の基準はこれから作成するが、UIA基準と同等と評価できる仕組みを考える。この制度を実施して会員が不適格になるようではJIAとは一体なんなのかということになる」。
 若松東北支部長から「来年度の予算を十分この制度の実施につぎ込んでいただきたい」との要望に対して、
 柳澤璋忠専務理事からは「2003年度の予算では建築家資格制度の分はほとんどない。会議が増える分くらいは見込んでいるが、かなり必要とされる広報費は一般会計では計上することはできない」との説明があった。
 私からは、「試行の財政的な裏付けつまり一般会計とは別に特別徴収することを、試行の具体案に表明しておく必要がある」。
 河野副会長からは「近畿、静岡ほぼ50%という経験を踏まえて会員全員でないといけない」と判断した。
 西部明郎オブザーバーからは大宇根会長に二つの注文があった。ひとつは建築士法に倫理が欠けていることが言及されていないことと、データベースが大事でその構築を考えてほしい。それほどお金をかけることはない。大宇根会長からは配慮する旨の回答があった。
 下村北海道支部長からは「全員参加が原則であるが、会員全員に周知してどれ位の会員がそのことに意味を見つけて参画するのか。その様子を見るのも試行ではないか」。
 松原関東甲信越支部長からも「全会員に実施する準備が万全とは言えない。それをチェックするのが、試行である」との意見があり、
まだまだ紐余曲折が予測され予断を許さない状況であった。(200347)