保存情報第27回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) UFJ銀行貨幣資料館 編集部

所在地 名古屋市中区錦2-20-25
構造・規模 SRC造、地上5階地下1階
開館時間 9:00〜16:00(入館は15:30まで)
休館日 土・日・祝日(銀行窓口休業日〕
入館料 無料
■発掘者コメント
2002年1月に移転オープンした名古屋広小路にあるUFJ銀行貨幣資料館(旧・東海銀行貨幣資料館)には、日本および世界各国の貨幣約1万点を、体系的に展示するとともに、貨幣製造技術の高さをうかがうことができる。
 栄から名駅(笹島)までの約2km。名古屋一の目抜き通りである広小路は、かつて「広ブラ」と呼ばれ、ウィンドウショッピングを楽しむ人々で賑わう一方、戦前からオフィスビルや銀行が建ち並ぶ業務集積地として機能してきた。
 近代建築様式をもつオフィスビルのほとんどは、戦災によって現存していないだけに、コリント式列柱が6本林立するUFJ銀行貨幣資料館は、当時の様式をそのまま残した貴重な建物といえよう。もともとこの建物は名古屋銀行本店(その後中央信託銀行名古屋支店へと変遷)として、1926年(昭和元)に曽禰達蔵を顧問に、名古屋の近代建築の担い手である鈴木禎次によって設計された。
 資料館の開館時問は銀行の窓口に合わせているため、曜日や時間に制限はあるものの、年間に約2万6千人が訪れると言う。館内には、両替屋の復元モデルやビデオコーナーのほか、1億円の重量体験、お札の身長体重計、偽札の見分け方などの楽しいコーナーが設けられている。また、貨幣以外にも歌川広重の「東海道五十三次」の版画類が所蔵され、展示内容を随時入れ替えながら、「浮世絵」を鑑賞することも可能だ。
 名古屋市都市景観重要建築物に指定されたこの建物、夕刻を過ぎるとライトア
ップされ、昼間と違う美しさで、街並みに華を添えている。
登録有形文化財 車山蔵 谷進/泣^クト建築工房
所在地  犬山市字東古券779
建設年代 1909年(明治42)
■紹介者コメント

 犬山には3つの登録有形文化財の建築物がある。2つの住宅と今回の車山蔵である。車山蔵とは、犬山祭の車山(やま)を保存しておくための蔵である。山車(だし)と称したり車山(やま)と称したりと地域により呼び名は異なるが、犬山では車山(やま)と呼ぶ。13の町内に車山があり、9町内で車山蔵を持ち収納している。
 13の車山はいずれも3層からなる豪華なもので、それぞれに名称がつき、絢燗な刺繍を施した水引き幕と江戸時代から伝わる「からくり人形」が見ものである。車山は愛知県有形民俗文化財に指定されている。
 享保の改革で知られる8代将軍吉宗は厳しい倹約令とともに、1721年発明考案禁止の御触書を出した。「器物織物の類すべて新しい物を考案し製造することを禁止する。ただし見世物新作は例外とする」、江戸からくり文化はこの禁止令があって高度化した。尾張藩主徳川宗春は、吉宗の倹約令に反し白由開放政策をすすめたことでよく知られる。多くの山車からくりで祭りを盛り上げ、庶民を楽しませた。全国の山車祭りの7割以上が旧尾張藩を中心とした中部地区に集中しているのはこんな背景があるようだ。江戸からくり人形は当時のハイテクである。今日、中部が産業技術の中枢圏を形成している起因のひとつともいえよう。
 さて、木造の車山蔵は、ここ本町の蔵とあと1個所だけ。板扉と漆喰の塗籠の壁が美しい。蔵に収められている本町の車山の名は「成英」、からくり人形の名は「唐子遊び」。3層の車山を2段まで組み立てたまま格納できる。

出展『日本の山車まつり」日本の祭研究会発行ほか