理事会レポート
兼業設計者の建築家登録めぐり 建築家資格制度議論紛糾     理事 上村貞一郎

◎第128回理事会
日時:2003年2月26日
場所:JIA会館3階セミナールーム
議事に先立ち議長に坂本克也副会長を指名、議事録書名人に
岩村和夫理事、上村貞一郎東海支部長を指名し議事が始まる。

■報告事項
1.後援・協賛事業について説明がある。

2.前回理事会以降の活動報告がなされ、とくに資格制度推進委員会関係の委員会の活動が目立った。そのほか社会向け事業について、大宇根弘司会長の呼びかけから環境街づくり、保存、建築相談、ハートフル住環境・都市災害の各委員会、部会などが参集し、全国ネットワークづくりのため積極的に活動に取り組み、総会前日である5月28日のワークショップ開催に向け、支部、地域会への参加を要請された。

 APEC・ARCHITECTの報告として、各国の資格基準では7年以上の経験と、3年以上の複雑な設計経験が必要であるとの事項が提案された。3月6日に開催される本会議に会長が出席されるとの報告があった。

3.支部長会議の報告(上村東海支部長)
・リフレッシュセミナーに30名の出席がある。

・CPD単位取得状況を支部長宛に送るため、必要に応じて各会員に単位取得状況を報せるなど支部長は適時判断してほしいとの報告があった。CPDの参加状況は2月現在で全会員の36%、12単位以上取得者は520名である。

・会員数の動向について、2月現在会員数4,735名、休会者76名、資格喪失予定者73名程度、今年度入会者173名、退会者197名であり、会員減少傾向は少し緩和している。増強キャンペーンの効果が少しあったのだろう。

・JIAホームページ掲載について、今後トップページに保存問題、本部、支部イベントなどをわかりやすく紹介する。

・2003年度各支部総会の日程の確認などが報告された。

・資格制度及び会貝種別について、各支部の状況が報告された。時間的制約があり、多くの会員の意見を集約できていない。また支部間では温度差が見られるものの、資格制度を推進していくこと、会費見直しは基本的に賛同の意向が多いものの、まだ会員に理解を求めるには説明不足の部分がある。討議の時間が短く次の理事会に討議を持ち越す。

4.会費未納による資格喪失予定者73名の報告があった。

5.JIA大会2003滋賀の大会実行委員長を林昭男氏に依頼した。

6.文化庁より海外芸術家招聰研修生の募集があった。UNESC0/UIA建築教育認定システム評議会の報告があり、認定のプログラム試行運営について意見が交わされ、年限を5,6年扱いにするかなどチャーターの内容を確認する必要がある。オーストラリアでの試行報告、ドイツより認定システムについて申請が出されている。この結果については次回UIA大会で報告されるので注目したい。

■審議事項
1.1月、2月合わせて新規入会者は48名、休会者10名と退会者の承認をする。

2.北陸支部長事務代行に次期支部長水野一郎氏を選任する。

3.名誉会員アーネスト・ハラ氏にJIA滋賀大会にて感謝状を贈呈することを承認した。

4.委員会構成について、社会向け事業委員会(建築相談、環境行動、都市づくり街づくり等推進、ハートフル住環境部会、JIA都市災害部会、環境部会、保存部会)などに担当理事を置くことになり、各担当理事を任命した。

5.外部アドバイザリーコミッティの導入に関する提案があり、この件は基本政策会議報告の中で提案され、WGのメンバーの紹介とともに外部アドバイザーについては各界から幅広く推薦者を出していただき、JIA活動について意見をいただいていく運営方法が報告された。

6.JIAとKIA(韓国建築家協会)およびKIRA(大韓建築士会)との協定締結について説明があった。この事項は双方から申し出があり、個別に協定を結ぶこととして、FIKA(韓国建築団体連合会)が発足したときには、新たにFIKAと協定を結ぶ条項を盛り込む。KIAとはKIA-AIAの協定を下敷きとして、KIRAとはJIA-KIAの協定を下敷きにして作成するとの報告があった。

7.2003年名誉会員の推挙があり、以下12名の侯補リストが発表された。橋本喬行氏、佐々木群氏、松本陽一氏、佐野正一氏、鋤納忠治氏、福本毅平氏、松田順吉氏、山根正次郎氏、大高正人氏、村尾成文氏、ゴードン・チョン氏、ヴァシリス・スグータス氏である。

8.2002年度決算見通しと、2003年度方針について
@会員数の減少により減収しているので、会費収入について実質収入に会計方式を改めたい。
A人件費の減少を考えなくてはならない事態であり、今後3年間に2,000万円程度の経費削減を計っていく必要があるため、今後の活動に影響が出るかもしれない。
B資格制度にかかわる経費は特別会計とする。
C事業収益をあげることを念頭にその収益を確実にしていく。
以上報告と提案があり、今後とも財政の見直しを計りたいとの報告があった。

9.設計者選定改善のための法制化運動の進め方について、建設産業基本問題委員会より基本方針、活動の具体的内容についての覚書が提示された。JIAは全組織を挙げて諸団体と連携し、数年以内に政、官、学界から理解者、協力者が得られるよう成果を挙げたい。そのために、わかりやすい冊子を作成し、本部、支部、地域会ではその具体的資料をもとに市民をはじめ、各界に働きかける運動を起こしたいとの報告と提案があった。

10.最後に本日の主課題である建築家制度の立ち上げについて議論が行なわれた。以下5つの基本的事項について審議した。
@建築家資格制度の試行にあたってはJIAの定款改正は行なわない。
A試行の対象となる正会員は、設計監理を業とする正会員とする。
B試行期間は2年間を目途とする。
C試行の対象としては、会員の登録のみならず非会員も含める。
D認定機関としては、第三者機関の設置を目標とする。

 資格試行の具体的内容については、JIA本部機関誌『建築家』に記載(2003年5月号)するとの説明があった。また各4つのWG(認定機関の検討、認定規則の検討、認定基準の検討、実務訓練の検討)からの現状経過と説明があった。
 しかし、基本事項4について異論(兼業の設計者に建築家登録を認めるか否かについて)があり、またWG検討事項についても基本事項と整理されていないとの指摘があり、この問題については次回支部長会議を臨時理事会として集中審議することとした。この問題については、至急会員から広く意見を徴集するが大切であると思われる。