理事会レポート
JIA建築家資格制度試行に向け具体策承認される                  理事 森口雅文

 第127回理事会は昨年末の12月18日にJlA館で開催された。今回は報告事項13件、審議事項8件が討議された。理事会終了後、成功のうちに終わった沖縄大会の開催に対して大宇根弘司会長より山城東雄沖縄支部長と又吉清春JIA大会2002年沖縄実行委員長に感謝状が贈呈され、沖縄全会員による温かい心のこもった大会運営に謝意を表明した。

報告事項では、
CPDの参加状況については柳澤璋忠専務理事から2002年度CPD参加者データの説明があった。2002年4〜11月の8カ月(2/3年)の会員の単位取得状況は、単位取得会員数では(取得単位数にかかわらず)全国平均で30%であるが、認定プログラム参加会員数と白主研修報告提出件数の総計(延べ人数)がほぼ会員総数と同数の約5,000人であったことが報告された。プログラムごとの単位数の違いはあるにしても、あと4ヵ月で初年度の必須12単位、全会員約5,000人による延べ約6万単位がどこまで達成できるのか予断を許さない状況であった。
 N氏(N会員の件ではなく)の件は柳澤専務理事より経過と通告書発行までの報告があった。N氏は2000年に正会員として入会を承認され、東海支部愛知地域会所属の会員であったが、愛知県建築士事務所協会の苦情相談に持ち込まれた苦情がきっかけで東海支部が調査した結果、本会への入会申込書の記載事項に建築士の資格がないのに一級建築士を詐称していたことが判明、その後本人もその事実を認めたので、大宇根会長名で本会正会員の入会承認を取り消す(撤回する)旨の通告書を2002年12月16日付で発行した。同時にこの通告内容は機関誌、ホームページにも公示し、再発防止をはかった旨の報告があった。今後入会審査の方法を検討するとのことであったが、私見ではあるが定款及び会員規則の完全なる運用で再発は防止できるものと思われる。
 建築設計資格制度調査会第16回幹事報告は中田亨参与から2002年11月19日に開催された同調査会の議事が報告された。同調査会ではまず日本建築士会連合会の専攻建築士制度とJIAの建築家資格制度を前提に新たな建築資格制度の創設に関する基本的事項について、両団体が2002年11月1日に合意したこと、両制度の一本化を目標に両制度を試行する中でその差異を整理し、認定と運用について両団体で検討する予定である。また日本建築学会(AIJ)や日本構造技術者協会(JASCA)などの他団体とも協力していく予定が同調査会に両団体の代表から報告された。次に12月12〜13日にマレーシアのクアラルンプールで開催されるAPECアーキテクトプロジェクト第2回運営委員会対応についての検討がなされ、APECアーキテクトの登録に必要な実務経験年数は資格取得時期を問わず(学校の卒業から)10カ年とすることで同委員会にのぞむこととなった。その後開催された同委員会では、APECアーキテクトの判断基準は登録・免許付与後の専門的実務経験については、@登録免許付与後7年以上、A専門的実務は事前調査、準備、基本設計、実施設計、設計監理がすべて含まれていること、B少なくとも3年問は中程度に複雑な建築物の設計監理を単独で行なうか、他のアーキテクトと共同で行なう複雑な建築物の設計監理の重要な部分を担うことという条件で合意されて、日本で事前に協議した登録・免許付与時期にかかわらず卒業後10年の専門的実務経験の提案は受け入られなかった。またAPECアーキテクトの運営に関しては各国代表者で構成する「中央評議会」の設置と、各国でのAPECアーキテクト・プロジェクトに関して一般的な責任体制を「監視委員会」(日本では国土交通省、建築技術教育普及センターと建築5団体の代表となるか)を各国に設置し対応することも合意された。次回は2003年9月18〜19日にオーストラリアで開催される。
 沖縄大会仮決算については山城東雄沖縄支部長から、収入22,085千円(未収金1,000千円を含む)、支出20,716千円で差額1,369千円の余剰金を計上した旨の報告があった。
 財務状況については柳澤専務理事から11月末現在の会費納入状況は前年対比で当初予想が▲20,000千円に対し、▲19,000千円と11月末では許容範囲内におさまっている旨の報告と今後これ以上会費納入が落ち込まないように本支部あげての会費納入への協力要請があった。

審議事項
新規入会者、休会者承認及び退会者報告の件では、新規入会者17人、休会希望者1人を承認し、退会希望者8人の報告があった。そのほか、2002年度入会金減額に関する特別措置の期限は、2003年2月26日に開かれる第128回理事会承認分までを減額対象として取り扱うことと、入会承認者の入会手続きに関する有効期限についての対応案を承認した。なお前回より継続審議となっている休会希望者の年限に関しては、3カ年を限度とすることが総務委員会で検討中との中問報告があった。
 委員会構成については一部の委員会の委員交替が承認された。委員会の中には会員外の委員を本会への入会を前提に委員に承認をしたが、まだ入会していない委員がいるとの報告があった。委員会の委員は、委員会規定第5条で会員以外からも選定できるように規定されているが、今後会員外の委員の承認については、本人の履歴や選定理由などを理事会にきちんと説明の上で審議するよう私から申し入れ、了解された。
 2003年JIA大会準備状況については、来年の大会は隔年ごとに支部大会に本部大会を併催する大会形式となる最初の大会で、「2003年J]A大会滋賀・2003年近畿支部大会」(仮称)として開催予定であり、現在近畿支部では大会実行委員会が組織され、同大会実行委員長には近畿支部滋賀地域会森野武雄会長が就任している。森野会長は今保存か改築かで話題の滋賀県豊郷町の豊郷小学校(その後同校は12月24日に現校舎の解体を中止し文化財登録して保存することになった)の建築の耐震調査と改築の設計を担当しており、その業務に関して他団体や凪内部からも疑念が示されている。その状況を考えて、兼松紘一郎理事の申し出により、同大会開催に関しては本部事業でもあるので近畿支部長から状況報告を聞いた上で理事会で協議することになった。冒頭出江寛近畿支部長からは近畿支部としてはJIAおよび本人の名誉のためにも滋賀大会を森野委員長で実施したい旨の説明があった。兼松理事からは大会が本部大会でもあるので、やはりJIA全体として再検討すべきではないか。JIAとして滋賀で開催するが、森野委員長は退いてもらって、その問題をとりあげながらJIAの大会にふさわしい大会にしてほしいとの提案説明があった。その発言に対し、再度出江近畿支部長から、大会を滋賀から撤退するのはまずいし、近畿支部としては森野委員長を信用することとし、この問題から引き下がらないつもりでいる。この問題についてのシンポジウムを行なうつもりでいる旨の発言があった。内藤廣副会長からは森野委員長を正としてスタートせずに、オープンにして議論を高めていくことが必要で、それがJ1Aのとるべき途である。井上守理事からはシンポジウムではっきりさせればよい。正確に状況を説明できればよいとの発言があった。以上の発言に対して出江支部長からはJIAはこの問題から逃げない。ただし実行委員長は変えるとの表明があり、大宇根会長からは、出江近畿支部長の言う森野委員長の身の潔白を証明するのと建築の保存問題をまともにとらえる好機と考えるが、当事者が実行委員長は無理ではないか、それまでに結論が出なくてもその経過をオープンにすることが大事であるとの表明があり、最後に坂本克也副会長から本日の理事会の意見をもとに近畿支部として再議されるようにとの要請で本件は協議を終了した。
 KlA,KlRAとの協定の方針については、JIAは韓国建築家協会(KlA:Korean Institute of Architects)と大韓建築士会(KIRA:Korea Institute of Registered Architects)の両会から実務的な事柄の協議のための定期交流の申し入れをそれぞれ個別に受けていたが、3会での交流をはかり情報交換や資格制度の話し合いを進めたい旨を両会に申し入れする方針説明と申し入れ書(案)が審議され承認された。
JlA3賞の規定見直しの件は、2003年度の3賞の募集要項(案)が説明された。前回からの変更個所は、新人賞では応募者は本会会員に限定する、ただし応募と同時に入会を申請し、受賞者決定までに会員として承認された者は受賞対象とする。環境建築賞も応募は本会会員に限定するが、応募と同時に入会を申請したものについては、新人賞と同じ取り扱いとする。また、審査員の一部交替と委員長の任期を1カ年延長する。25年賞は応募作品の竣工年限はこれまで竣工後25〜30年としていたものを竣工後25年以上のものを対象とし、竣工後の年限に上限を設けないこととする。以上の提案があり、すべて承認された。
次に本日の主要議題である資格制度の進め方について(答申)と会費改定に関する答申については河野進副会長から建築家資格制度推進委員会(大宇根委員長)の答申書である「建築家資格制度の全国試行に向けて」と会員種別、会費種別に関する検討委員会(河野委員長)の答申書「会員種別・会費種別の見直しに関する答申」の説明があった。その概要は次の通りであった。
 まず資格制度は、2002年11月1日付けで日本建築士会連合会とJIAは「新たな建築資格制度の創設に向けた基本合意書」を調印した。この合意書により2003年1月以降両会による具体的な論議が開始されるが、その前提として、JIAとしての建築家資格制度の在り方を近畿の登録建築家制度と静岡のプロアーキテクト両制度の試行をふまえてJIAとして次のような方針を立てた。(1)両会のそれぞれの資格制度の試行は実践する地域の状況に応じてもっとも適切と考えられる手法で展開する。(2)JIA正会員の全員登録を基本方針とし、二重構造は避ける。(3)試行期問は2003〜2004年度の2カ年とする。(4)資格認定機関としてJCARB(JIAから独立した第三者認定機関で将来はNPO法人として運営、当面はJIA内に設立)を創設する。(5)建築家資格システムとしては、長期的にはUIA基準に対応し建築士法の改正を含めたものとする。中期的には一級建築士の資格の取得と実務訓練による単位取得を基礎要件とした認定コースを提案する。これが日本建築士会連合会との調整の要となる。短期的にはJ1A会員の移行措置を提案する。(6)建築家資格の資格要件としてCPDを義務づける。(7)予算措置は、初期登録料20千円、運営管理費年額5千円とする。以上の提案があった。
 次に会員及び会員種別の見直しについては、現行の会費収入約270,000千円を確保することを前提として、(1)会員種別は「正会員」のみとする。(2)会費種別も原則1種類とする。(3)正会員の年会費は60千円とする。(4)建築家資格制度の運用管理費を会費に含めることとし年額5千円とする。(5)以上により正会員の会費は65千円とする。(6)CPDの単位取得不足者や将来正会員となろうとする者で期間等の与条件で建築家資格の基準に満たないものは準会員として入会可能とし、会費は36千円とする、との提案があった。
 小倉善明副会長からは、認定コースでは教育制度の変更への対応ができないのではないか。また、建築士法の見直しあるいは廃止といいながら建築士制度を前提としているのはいかがなものかとの指摘があった。出江近畿支部長からは士会の統括専攻建築士はあくまでも技術者の資格であり、美学、(哲学)、倫理と技術を要件とする建築家との違いを確認しながら、士会とは「共同」なのか「共存」なのかとの質問には、小倉副会長からは「共存」と考えているとの回答があった。私からはJIAの建築家資格制度の試行にあたっては、まず1997年11月に発表したJ1A建築家資格制度(素案)の取り扱いと、近畿と静岡での試行の結果を会員にきちんと報告すべきであること、JIAは連合会ではなく、全国単一組織であるので、試行するなら支部ごとの試行でなく全国で試行を実施すること、また会費に建築家資格制度運用管理費用を含めるとの提案には徴収は一括でもやむを得ないが、当初から別会計にしておくべきであることを主張した。大宇根会長からは、皆さん試行に大変熱心で、このままゆけばJCARBも発足するだろう。その場合、これでも試行なのか、士会との話し合いはどうなるのかとの疑問が出された。そのほか小倉副会長からはJIAの活動に協力してくださる人も入会できる会であってもよいのではないか。出澤潔理事からは会員への周知をはかる必要があることと、専攻建築士制度との整合に関しては今のところ各地域ではその動きのないことの説明があった。河野副会長からはJIAが先行試行することがこの問題の進展をすすめることになるとの発言があり、浅井康行理事からは本日の両答申はよくできていると思うが、つい先目CPDを会員格として先行させたばかりであり、建築家資格制度の試行は急ぎすぎではないか、協議の時間がほしい、との要望があった。以上審議の結果(1)建築家資格制度は全国試行で実施する。(2)JIA正会員は試行する資格制度による認定を受けて登録建築家の資格を取得する。(3)資格認定とCPD運営のため第三者性のある組織として建築家認定登録機関JCARBを設定する。以上の三項目を審議事項として提案され、挙手により採決し、賛成18、反対O、保留2で可決承認された。なお本件の審議は、大宇根会長からJIA独自の建築家資格制度を試行するとしても、日本建築士会連合会との共同声明を大事にしたいとの言葉で締めくくられたのが印象的であった。2003年度通常総会日程の件は高野孝次郎常務理事より説明があり、提案通り2003年5月29日(木)で承認され、延々4時間を超える理事会は終了した。(2002.12.27)