保存情報第25回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) デイサービスセンター松岡大正庵
(旧松岡旅館)
谷口元/名古屋大学
■発掘者コメント
 かつての中村遊郭街の一角に2001年(平成13)4月からデイサービスセンターが開設された。再生した建築物は1912年(大正元)に建造され、修復と増築が繰り返されてきたが、1993年(平成5)には市の景観重要建築物に指定されるに至った。90年の永きにわたって遊郭から料理旅館、料亭へと経営転換を図ってきたが、閉鎖を余儀なくされていた。3代目の主人によって駐車場やマンション、スーパー、レストランなど、さまざまな再開発計画案が練られたが、長年親しんできた建物や庭の保存と活用が図られ、かつ事業採算の見込みがあり、地域のお年寄りのための憩いの場をつくりたいという熱意から、この施設が実現した。時を経た建物の温かみと、旅館や料亭の「もてなしの心」を活かした接遇サービスがなされ、連日多くのお年寄りでにぎわっている。従来ありがちな施設くささはまったくない。手すりや段差の解消、浴室の増築など手は加えられているが、保存と活用が両立している模範例であろう。現在は使われていない2階の大広間も、いずれダンスホールなどとして開放し地域のコミュニティーの場にしていきたいとのことで、そのときには永年閉ざされている遊郭時代の門が開かれることとなる。
かつて遊郭や料亭であった松岡大正庵 連日多くのお年寄りでにぎわう
 所在地  名古屋市中村区日吉町13
 竣工年  1912年(大正元年)
登録有形文化財 金城学院高等学校榮光館 福田一豊/福田建築事務所
■紹介者コメント

 私が以前東区に住んでいた関係でよくこの学校の前を通り目にしていたことから、とても印象に残っている建物です。
 金城学院は、1889年(明治22)米国南長老教会の宣教師ミセス・ランドルフが創立した金城女学校に始まる女子校のミッションスクールです。この榮光館は講堂兼礼拝堂としてつくられたもので建設費は約17万円(当時)、建物は3階建てで、1階が図書室、2〜3階が講堂、3階の一部に祈祷室・礼拝堂があります。
 外観は屋上パラペットにスクールカラーの赤いスペイン風瓦を用い、外壁を白(べ一ジュ)系統に塗り、壁面には深い彫りのあるアーチの窓が連続しているスパニッシュスタイルの建物です。全体的に清楚で調和のとれた教会風で、明るい外観となっています。正面エントランスホールにはゆったりとした階段を配し、階段手すりには大理石を使ったゆるいカーブが見られます。階段の踊り場にはステンドグラスの窓がはめ込まれ、ホールのアクセントになっています.当時としては大変モダンであったと考えられますが、現在でも古さを感じさせません。また現在も建設当時の平面配置のまま使われていることは大変に貴重なことです。
 この建物は名古屋市の[壁・主税・橦木の町並み保存地区内にあり、町並み景観のシンボル的な存在になっています。
 設計者は基礎設計を名古屋高等工業学校教授佐藤鑑、建物設計城戸武男、設計顧問土屋純一です。
清楚で調和のとれた外観 パイプオルガンを備えた講堂

所在地  名古屋市東区白壁4-64
登録番号 第15回489-1
構造・規模 RC造、地上3階
建築面積  800u  
延床面積  2,118u
竣工     1936年(昭和11年)
階段踊り場のステンドグラス