保存情報第21回
登録データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査)有形文化財 高山市内町家 原眞佐実/原建築設計事務所


吉島家住宅


日下部家住宅

松本家住宅

吉島家住宅

日下部家住宅

吉島家住宅
■発掘者コメント

 岐阜県には、高山市、美濃市、岩村町など三個所の、伝統的建造物群保存地区があり、高山市の場合、三町と呼ばれる一之町、二之町、三之町の町人地が、1979年(昭和54)に、重要伝建群保存地区に選定されました。今回は、保存地区には含まれていませんが、保存地区から、少し南の位置にある建造物を、三点ほど紹介します。いずれも国の重要文化財(建造物)に指定され、JR高山駅から徒歩で15分くらいに位置しています。
 その一点目は、高山の町家を代表する商家の吉島家。1875年(明治8)の高山町大火災の後、翌年には再建されましたが、1905年(明治38)に再び類焼し、表側が少し焼け残ったのみとなりました。2年後、四代吉島斐之が再建しましたが、母屋を大工西山伊三郎に、座敷を内山新造に受け持たせています.
 二点目は、屋号を“谷九”という高山の豪商、通称“旦那衆"と呼ばれた、日下部家。1875年明治8)の大火で焼失後、1879年(明治12)に建て替えられ、江戸時代の軒高よりいくぶん高くはなっています。
三点目は、旧益田街道沿いに建ち、屋珍“原三”で薬種を商いとしていた商家、松本家。もともとは上一之町で、煙草、金貸業を営んでいた松本家は、1912年(明治45)、原三からこの建物を譲り受け、現在まで大改造をせずにそのまま残しています。とくに松本家には、高山市内の町家では、もっとも古い漬物蔵・米蔵などが現存され、一見の価値ありかと…。
 これは余談ですが、愛知県には伝建群保存地区が、一個所も存在しないのが残念ですが、先日、“NPO犬山城下町を守る会"が、長い時間を経て誕生しました。JIAの諸兄で興味のある方々は、ぜひ、ご参加ください。
登録有形文化財 奥村家住宅 才本清継/才本設計アトリエ

外観、肴板以外はかつてと変化はない

離れ座敷は、現在も変化なし


1階内部、大きく改造されている

所在地 犬山市東古券395 TEL 0568-65-2447
建設年 江戸末期
登録番号 第19回637号1〜9
■紹介者コメント
 奥村邸は犬山城下の街道沿いに建つ商家で、名鉄犬山駅にも近い。天保13年(1842)の大火後に建てられ、明治32年(1899)に大規模修理され現在に至ったと伝えられています。大きな庭を囲むように、母屋をはじめ、門、蔵、離れ座敷などが残る比較的大規模な文化財です。
 2年半前にJIA愛知地域会の例会の際に奥村邸を見る機会を得ました。今回改めて見学すると驚いたことに、奥村邸が“フレンチ創作料理なり多”というレストランに変身していました。話によると、今年の1月に改造工事をはじめ、3月に開店したとのこと。パンフレットには「150年の歴史のドラマとフレンチ創作料理のコラボレーション」とあり文化財を売り物として商売をはじめたようです。
 実は私白身最初に見たとき、玄関の十間付近に吹抜けがあることや、離れ座敷の開□部が大きく、白然と一体となった風情が好きで、設計の参考としてあとから何度も写真を見たこともあり、今回の改造は残念でした。母屋は相当大規模な改造でかつての姿は見る影もありません。ただ1階の離れ座敷は「離れ客席」として使われており、改造はほとんどされていないようです。
 最近古いい民家を改造して飲食店をつくる事例が多く見られますが、こうした文化財の改造には、少々複雑な気持ちになります。ただの遺産として残すだけでなく、それを現在に生かすことは、前向きな行為とも受け取れますが、商売上、今まで公開されていた部分が、見ることができなくなることは残念です。
 参考までに連絡先を記しておきます。興味のある方一度ご賞味、見学をしてください。