理事会レポート
JIAの会員義務であるCPDの完全実施を       理事・東海支部長 森口雅文
 第123回理事会は去る4月23日にJlA館で開催された。一部の理事の改選時期にあたり、実質2001年度最後の理事会となった。今回の議長代行には中田亨専務理事が指名され、延々4時間15分にわたり、報告事項19件、審議事項5件、協議事項2件が討議された。
■報告事項
 2008年UlA大会東京誘致プロポーザルの件は、JIAは3月末に立候補を届け出た。結局立候補したのは、トリノ(イタリア)、セビリア(スペイン)、プサン(韓国)、東京の4都市である。予想外のプサンの立候補により競争の激化は必至で、今のところは的確な情報の収集に努めている。一方誘致に伴うUIAへの負担金にっいても当初提示されていた50万ドルの倍額を申し出ている都市があるとも噂されており、予断を許さない情勢である。3月28日にはUIA大会2008東京誘致委員会(棋文彦委員長)を開催し、国内の支援態勢を固めた。 
 建築設計資格制度調査会の件は、3月26日に第3回の本委員会を開催し、これまで幹事会と同WGとで検討してきたAPECアーキテクトヘの対応策にっいて協議した。WGではUIA推奨基準を念頭において、JIAの建築家資格制度(近畿支部ですでに実施)と、日本建築士会連合会の専攻建築士制度を基本に、教育要件は大学と大学院を含めた6年問とし、一級建築士取得を条件とする資格制度で対応することで概ね合意を得ていたが、まずは現行の一級建築士制度をべ一スにAPECアーキテクトに対応すべきとする意見との調整がっかず、6月にシドニーで開催される第1回運営委員会では日本からは具体案は提示しないで、APECアーキテクトの概念などにっいての議論に加わることとした。
 建築士の継続能カ開発制度(案)の件は、日本建築士会連合会ではこれまで独自で検討してきた継続能力開発制度を3月の理事会に答申した。今後全国の単位会に説明した上で、7月には正式に決定し、年度後半にはスタートさせたい意向である。内容は実務による能力開発を14単位、継続研修による能力開発を36単位、合わせて年問50単位を目標としている。また同制度の認定は自己申告を原則とし、記録のしくみはデータベース化を前提とした手帳方式で発足する。2004(平成16)年度の専攻建築士制度の発足する時期に照準をあわせている。
 公益法人問題の件は、政府は3月29日に「公益法人に対する行政の関与のあり方の改革実施計画」を閣議決定した。これにより建築士法に基づく指定講習会などのいわゆるお墨つきの事業は2005(平成17)年度までに廃止することが決められた。しかし建築士の資格試験などについては、結論が先送りされている。
 JlA25年賞の件は、本年度から実施された。支部審査の選定によるJIA25年賞が、一般部門9作品、住宅部門6作品、支部奨励賞が一般部門4作品、住宅部門2作品が決定した。今後JIA25年賞受賞作品の中から同賞(大賞)の選定を行ない、両賞合わせて10月の沖縄大会で表彰する。
 千葉地域会の件は、千葉地域会ではかねてより財政的な理由もあり、一層の活性化を目的として干葉設計監理協会との合併を検討してきて、双方ほぼ合意に達した。しかし合併する場合は、千葉地域会を解散することが前提となっていた。もともと地域会の設立は支部総会承認を経て総会で決議されているだけに、地域会の一存で解散できるものではないことから、結局千葉地域会は存続させたまま、新団体「千葉建築家設計協会」を発足させることになった。
 建築家の業務WG中間報告の件は、「建築家の業務」の改定は1992年以来!0年振りで、今回の改定の趣旨は(1)顧客満足度調査に基づいた実務基準の策定、(2)建築家の業務をプロジェクトのフェーズ単位からプロフェッションごとに再構成、(3)FMやCMといったものも含め建築家の業務領域の広がりへの対応となっている。
審議事項
 休会者承認およぴ退会者報告の件は、休会希望者29名が承認され、退会者68名が報告された。休会希望者の内5年目、4年目の会員がそれぞれ5人となっているが、休会の年限については別途検討する必要があるように思えた。なお入会に関しては入会金減額が実施されるまで本部と支部で入会の取り扱いを一時保留にしているとの報告があった。
 役員人事の件は、橋本喬行参与の任期が今年7月までであるが、任期を2カ年延長することが承認された。また次回理事会に諮られる柳澤璋忠理事の参与就任(9月から専務理事就任予定)、高野孝次郎事務局長の常務理事就任に関しても特別異議はなかった。
 総会議案の内CPDに関する規則・細則(案)の件は、前回理事会で再確認された「CPDの試行から実施」を受けて、2002年度通常総会に上程されるCPD規則については、同付則で、実施状況を勘案して当分の問毎年度必要に応じた見直しを行なうことを規定することを条件に承認された。しかし細則に関しては、主に第2条の1参加者と第10条の3参加者の登録抹消に議論が集中した。第2条の1参加者は今回は次の二通りが提案された。「参加者はCPD評議会に参加登録を行ないCPDに参加する者をいい、JIAの正会員は会員義務として参加者に登録される」(原案)と「参加者はCPD評議会に参加登録を行ないCPDに参加する者をいい、JIA建築家である正会員は会員義務として参加者に登録される」(変更案)。第10条の3では「正会員が特段の理由なく3年以上にわたり、必要履修単位数の取得を怠った場合は、参加者としての登録を抹消される」が、これまで通りで提案された。
大宇根弘司次期会長からは、「第10条の3の意味するところは結果的に会員資格を失うことになる。『JIA建築家』は不要と思っている。CPDと資格制度は密接に関係するが建築家資格制度はJIAだけでは成り立たない。定款上はJIAの会員は建築家であり、このCPDは会員義務として、会員の質を担保するために必要である」と強く主張されたのが印象的であった。
下村憲一北海道支部長からは、大宇根次期会長の発言に十分理解を示しながらも、北海道支部から申し出た資格制度が確立されるまで第10条の3の執行を留保する、つまり単位不足により即会員資格喪失とならないようにする申し出はどう取り扱われたか」との質問には、
大宇根次期会長からは、「CPDと資格制度とは無関係ではないが、今JIAのやろうとするCPDは会員の質を担保するもので資格のためではない。資格を担保するものよりもっと高度なものを考えている」との回答があった。
清水公夫東北支部長からは、「これまで3年も建築家資格制度のことを議論してきたが、若松信行次期東北支部長からCPDの実施がむずかしいような発言もあったが、単位取得できない会員には退会してもらうより仕方がないと思っている」との発言があった。
森口雅文束海支部長からは、「JIAの会員資格としてのCPDの実施は2000年度の総会で決議されていることで予定通り完全実施すべきであり、この際もっと総会決議の重さを会員一人ひとりが認識すべきである。変更案の『JIA建築家』という紛らわしい表現は避けて、JIAの会員でもっぱら建築の設計監理を行なう者に限定してはどうか」との提案があった。
浅井恵弘近畿支部長からは「過去に会費未納者の取り扱いでも資格喪失までかなり時間がかかったようであるが、本当に3年で会員資格喪失まで完全実施することができるのか」との念押しの発言があった。
出澤潔理事からは、「CPDは会員増強の道具としたい。内容をゆるめるのは反対で、原案通りがよい」。
芦原太郎副会長からは「JIA建築家という表現を大事にしたい。世間がJIA会員を認識するためにもまた会員の自覚のためにも、具体的なイメージづくりが必要だ」とする発言に、
大宇根次期会長からは、「JIAの会員は建築家として入会している。社会がどう見るか、はたしてJIA建築家なるものがあり得るのか」との疑義がはさまれた。
坂本克也副会長からは「近畿で建築家資格制度を実施しているが、単位を取得するにはまず自主的な申告ができるかどうかにかかっている。申告もできない人は建築家以前の問題である」との強い発言があった。
鮎川透次期九州支部長からは、「CPDは基本的にやるべきだと思っている。ただその仕組
みが問題ではあるが、建築家資格制度を前提としたCPDであることを明言すればよい」との発言があった。
清水耕一郎九州支部長からは、「CPDに関して九州支部からは三度意見書を出したが、とくにプログラムの認定に関しては評議会に限定せず、支部の自主的な運営を申し出たが、どのように取り扱われているのか、たびたびの意見の徴集の結果が一向に反映されたようには思えないが」との質問に、大宇根次期会長からは「地域によっては自主的に運営できないところもあり、全体として実施したほうがよいと判断した」との回答があった。
かさねて下村北海道支部長からは、「ある程度の単位数は支部での認定を認めてほしい」との要望があった。
そのほか田中光北陸支部長や又吉清春沖縄支部長代理からも支部認定プログラムの許可の要請があった。一方清水東北支部長からは「支部単位より全国認定の方がよい」。
服部範二関東甲信越支部長からは「当支部では支部での認定は無理であるし、本当に各支部でできるのか、むしろ自主的に申請すればよいのではないか」との発言があった。
村尾成文会長からは、「支部で認定するには認定できる組織が必要であり、また全国的に各支部を横断的に調整する必要がある」。
大宇根次期会長からは「提案があれば評議会で検討する」との回答があった。
浅田近畿支部長からは「大宇根次期会長は会員は建築家であるとしているが、建築家の明快な基準(定義)がほしい。認定プログラムの同等性担保がどうすればでき、具体的な認定方法はどうなるのか。CPDは認定プログラムに頼るより自己申告する姿勢が大事である」との発言があった。
寺本敏則理事からはJIA建築家という表現は好ましいこと、芦原副会長からは再度JIA建築家を推す発言があった。ここで清水九州支部長から「JIA建築家」という表現にして、JIA建築家に注釈をっける変更案の変更が提案され、一部の理事の賛同が得られたので、動議として採択された。採決(挙手)の結果、賛成6、反対12で動議は否決された。つづいて当初提案された2案で採決(挙手)を行ない、「JIAの正会員」(原案)8票、「JIA建築家である正会員」(変更案)7票で、原案が承認された。この議決に対して、定款上ではJIAの正会員は建築家であるが、会員規則により建築家でない会員の入会を認めているので、CPDの実施にあたってはその会員の取り扱いに配慮が必要であろうとの村尾会長の注意があった。つづいて、第10条の3の会員資格の喪失に関して採決(挙手)した結果、賛成11票、反対4票で原案通り承認された。
 2002年度通常総会議案の内2002年事業計画の件は、
大宇根次期会長から基本的な考え方の説明があった。これまでの内向であった活動を次年度からは積極的に外向のものとすることとし、地域会、支部を中心とした活動を展開し、活動を広く市民に理解される努力をする旨の説明があり、事業計画はおおむね了解されて次回理事会で承認することとなった。
芦原副会長からは「建築家資格制度の実現」についての具体的な回答を求められた。
大宇根次期会長は、「士会の専攻建築士制度の統括建築士は、近畿の実施している登録建築家と内容が近いのでまずこの制度を実現させて、将来UIAの基準に則したものとする。士会は単位会での実施になるので支部や地域会で対応したほうがよいと思っている」との回答があった。
村尾会長からは「一緒にやれない支部や地域会があるとすればJIAの指導性が問われることになる。建築家資格制度の『試行』を全国的に展開するとあるが、制度として完全になるまではすべて試行と考えている。JIAがどこまで一緒にやれるのかが鍵で、今のところ士会連合会としてはまとまっているが、単位会の動きはまったくわからない状況である」との説明があった。
大宇根次期会長からは、「自信のなさもあるが、微妙なところがある。士会も一級建築士の不合理を認め専攻建築士制度をすすめようとしているが、JIAがまた独自の動きをするのではないかとの疑念をもたれかねないので、慎重にならざるを得ない。うまくやらないと建築家資格制度の実現が危うい。今JIAだけのことを考えるべきでない。結局社会がそれを必要とすることが大前提となる」との説明があった。
岩村和夫次期理事からは、「資格制度は一体何のためにやっているのか。米国や中国は自国の戦略展開のために国際化を提唱しているのは明らかである」との発言に、
村尾会長からは「資格制度はこれからの若い人のための制度である。日本の建築マーケットは縮小する一方建築科の学生は減らしていない。建築産業全体で考えて外国での仕事は当然考えておかねばならない状況にある」との回答があった。
 総会議案の内2008年国際建築家連合UlA大会東京誘致の件は、「大会誘致に関してUIAに支払うことが必要となる資金についてはJIA国際交流基金をもってあてるとあるが基金であれば当然のことではあるが、運用益の範囲内と考えてよいのか」との森口東海支部長の質問には「場合によっては元本の一部をあてることもあり得る」との説明がなされたが、特段の異議なく承認された。
 建築物の保存要望についてのJlA指針(案)の件は、JIAとして建築物の保存要望を出すときは、原則として支部を単位とすることとし、支部長が責任をもっこととした指針が説明され、挙手による採決の結果、可とするもの13人で承認された。(2002.4.29)