保存情報第15回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 姫が池界隈 谷村茂/アール・アンド・エス設計工房
■発掘者コメント

 名古屋市千種区に姫が池という所があります。姫が池はもともと日泰寺の放生池でしたが、現在は駐車場になっています。日泰寺舎利殿の東側には多くの寺が立ち並んでおり、四季折々に風情たっぷりの山寺の様子をかもし出します。この地域には日泰寺をはじめとして、相応寺、善篤寺、大竜寺、大林寺、西蓮寺、台観寺そして尋盛寺へと南から北へ連なっています。それぞれ由緒ある寺ですが、相応寺は徳川義直がその生母相応院おかめのために、1643年(寛永24)に現在の山口町に創建したもので、1934年(昭和9)に現在の地に移りました。
 写真は2002年1月3日の大雪の日に、愛犬との散歩道から撮ったものですが、名古屋市内というよりはどこかの山寺のようではありませんか。

所在地:名古屋市千種区姫池通(界隈)
交通機関:地下鉄東山線覚王山駅より徒歩12分
登録有形文化財 愛知県庁 森口雅文/伊藤建築設計事務所
■紹介者コメント

 愛知県庁舎は、名古屋城郭内三の丸官庁街にあって、県庁舎に先立って1933年(昭和8)に建設された名古屋市庁舎とともに異彩を放つ存在で、名古屋の都市景観を特徴づけている。洋風の躯体に和風屋根をのせた大規模な帝冠様式の建築が建ち並んでいるのは、国内でもこの名古屋城郭内の一画だけではなかろうか。名古屋城の形態を取り人れて、西側正面と、南北面の中央に大きな城櫓造の塔屋を乗せた形は、昭和初期に台頭した帝冠様式と言われる復古主義建築の代表例の一つとされている。
 庁舎は鉄骨鉄筋コンクリート造、地下1階、地上6階で、延28,314.48u(8,565坪)の規模である。「大きくてただ美しいだけでなく、堅牢で便利で執務環境は衛生的で使用材料には県産奨励に努め、設計や実施には協議や諮問に適切な機関を設けて万全を期すように」との希望条件をつけて、建設が県議会で可決されたのが1933年、1935年(昭和10)10月24日に起工、おおよそ30ヵ月をかけて1938年(昭和13)3月22日に竣工させている。 設計は愛知県総務部営繕課とされているが、企画を佐野利器が、外観設計は渡辺仁が担当したようである。施工は褐ヒ田組が2,404,500円で請け負っている。当時の大学卒の初任給が40〜50円と言われているので、時価に換算すれば、おおよそ100億円をかけた大工事であったと言える。
 すでに耐震診断も終えているようですが、もし補強が必要であればぜひ最新の技術を駆使して補強を施し、ぜひ動態保存の模範を示してくれることを期待するものです。