理事会レポート
CPDは資格制度の要件以前にJIAの会員資格と考える             理事・東海支部長 森口雅文

 第121回理事会は去る12月18日に開催された。今回は午前中に支部長会議を行なったあと、午後から[公益法人−隠された官の聖域−」の著者北沢栄氏による“どうなる特殊法人・公益法改革”と題した講演会を開催したため、夕刻からはじまるJ1A環境建築賞の表彰式の間の限られた時間内で、報告事項17件、審議事項6件、協議事項3件を討議したが、とりわけCPD完全実施のための議論を集中させた。

報告事項では、
 まずPDE(Professional Development Engineering)協議会プロジェクトの件は、日本建築学会からの情報提供によれば、同協議会は(社)日本工学会と経済産業・文部科学両省のメンバーで構成されていて、これからエンジニアのCPDを協議しようとするもので、7千万円の補助金の交付を受けることになっており、今後建築家資格制度のCPDとのかかわりを見守る必要がありそうである。
 建築設計資格制度調査会幹事会の件は、APECアーキテクトの第2回会合(オーストラリアで、2002年5月開催予定)までに、日本としてAPECアーキテクトヘの対応の国内の合意が必要で、12月18日の幹事会ではWGを発足させて具体的検討に入ることになり、JIAからは河野進氏と和智信二郎氏がメンバーに加わることになった。2002年2月には原案をまとめ、同年4月には本委員会に諮る予定である。
 地域委員会十第8回全国地域会合同会議報告の件は、地域委員会の八木利喜彌委員長出席のもと、本田伸太郎委員から昨年10月JIA大会2001金沢に併催された全国地域会合同会議の報告があった。すでに「JIANEWS』で詳しく報告されているが、要約すると、
 @CPDを先行させるにしても、建築家資格制度との関係を明かにすべきである。
 A予定通りCPDを完全実施した場合、単位取得不足会員の取り扱いを具体的に説明すべきである。
 BCPDの運営にかかわる財務検討はどのようになっているのか。
以上3点にしぼられるようであった。昨今の地域委員会の活動を見るにつけ、あらためてまた早急に支部と地域会の役割についての議論が必要であるように思った。
 JlA基本政策会議の件は、いまだに国の公益法人の制度改革の着地点がはっきりしないこともあり、団体の形は問わずに、JIAのあり方の基本を今年度中にまとめることとし、2月の理事会で報告書(案)の概要を説明し、4月の理事会に正式報告することになった。
 JIA2001大会金沢の件は、大会の結果が報告された。参加人数は450人(内正会員360人)で目標600人には達しなかったこと、大会経費は約2,000万円で、AIAメモリアル基金への義援金20万円を差し引いても約40万円の繰り越し金を計上したとの報告を受けた。
 AlAメモリアル基金の件は、12月17日現在で、全国の支部から、248件、総額1,162,185円の支援があったことが報告された。しかし、目標の500万円にはまだほど遠く、とくに東海支部は17件、44,O00円の報告を受け、支部会員への協力要請の必要性を痛感した。

審議事項は、
 新規入会者8人、休会希望者11人を承認し、退会者29人の報告を受けた。
 委員会・部会の構成の件は、一部の委員会の委員の追加を承認したほか、大宇根弘司氏を委員長とした財務特別委員会の発足を承認した。
 リトアニアにおける日本建築家展共催の件は、在日リトアニア大使館から、リトアニアと日本の交流をはかるため日本の建築家との交流を基本とした展覧会とセミナーの共催の呼びかけがあり、JIAには日本側の主催と建築作品の提出と人の派遣が要請されている。会期は2002年7月30日〜8月5日までリトアニア共和国カウナス市で開催される予定で、芦原太郎副会長からはとくにUIAベルリン大会のあと多数のJIA会員の同展への参加が要請され、とくに異議もなく承認された。なおリトアニア共和国は、最近話題になり多くの人が知るところであるが、第二次世界大戦中、同国の日本大使杉原千畝氏が、ナ
チスから多数のユダヤ人を保護したことで、今でも日本人が高く評価されているお国柄である。
 グループ保険の件は、総務委員会よりグループ保険(団体保険)の引き受け会社複数化に関する報告と提案があった。具体的には現在の受託会社である三井生命を幹事会社として引き続きとりまとめを委託する一方、複数社(2〜3社)を受託先として受け入れさせることにより、昨今の金融不安の折、当保険制度の安全性と継続性の強化をはかり、ひいて
は保険加入の促進、とくに若年層の加入をはかろうとするものである。三井生命にはこれまでJIA大会の協賛金などで会の運営に多大の経済協力を受けてきたが、その点に関しては実質減のない方策を今後検討するとの説明があり、特別異議もなく承認された。
 会員増強の件は、第118回理事会の決議をうけて会員増強特別委員会が「期限を切った入会金免除の制度」を視野に入れた具対策を検討し、その結果が報告された。12月17日現在で、会員数は4,955人、休会84人で計5,039人、JIA入会候補者の推薦リストアップの集計は、12月14日で150人と目標の1,OOO人にはほど遠い状況が報告された。提案書の中では、建築他団体の会員数の減少を見るにつけても増強運動によりJIA会員が目に見えて増加すればJIAの強い意志を内外に示す絶好の機会となること、若年層の増強は会の若返り、会の永続性、活性化に多大の影響を与えることなどが強調されている。とくに創立15周年の平成14年度に限った入会金の減額は、ぜひ理解してほしい旨の説明があった。ただ入会金の免除となると定款改正が必要なので減額(全額ということであるが、はたしてそれが減額と言えるのか疑問が残る)とすること、また入会金は積立金的性格のものなので運営費としてはとくに問題がないことなどの説明があった。今後加入促進のためのリーフレットを作成し、会員増強キャンペーンを実施するとのことであった。この件に関して各支部長の意見が問われたが、以下はその発言の要旨である。
 下村憲一北海道支部長は、「会員増強の目標は10%としている入会金減額より会費の方が問題である」。
 服部範二関東甲信越支部長からは、「東京の会員の80%がラージファームに属し、その
数は700〜750人に及ぶため、入会金の減額は入会しやすくなるのではないか」。
 私からは、「増強の目標はまだ決めておらず、今後検討する。個人的には入会金の減額には賛成しかねる。会員数の減少は入会金の問題ではなく別のところにあるのではないか。むしろきちんと入会金を納めて入会した会員への説明がつかない」ことを指摘した。
 田中光北陸支部長からも、「JIAの活動が正しければ、CPD完全実施により一時的に会員が減っても、最終的には会員は増えるであろう。入会金の問題ではないと思う。むしろJIA活動の活発化と会費が高いことの方が問題である」との発言があった。
 奥田實中国支部長からも支部の意見ではないと断った上で、「入会金減額には反対」。
 浅田恵弘近畿支部長からは「ラージファームの定年退職による退会者を次につなげるために、入れ替えで新会員の入会を促すには効果があるだろう。ただし会員増強は呼びかけだけでなく何か目玉商品が必要である」との発言があった。
 その他上田尭四国支部長や清水耕一郎九州支部長からは「入会金減額賛成」の発言があり、沖縄の山城東雄支部長からは「大賛成」とした上で、「3年間半額ではどうか」との新たな提案があった。
 西村征一郎監事からは、「このままではじり貧で10年たったら、会員数がゼロにならないかと心配しながらも、会員数や会費など部分にとらわれない方がよい。会員増強は、むしろ会を活性化する方策の一つとして取りあげるべきである。それよりも入会時に推薦者を必要とするが、いつの間にか退会しているのが実状で、退会時にも何らかの形で推薦者の了解をとるべきではないか」との指摘があったが、この問題は今後の検討が待たれる。
 小倉善明副会長からは「意図的に若い人の入会をすすめる意味でも、減額は45歳以下に限る方法もあるのではないか」との提案があった。
なお本件はこれらの議論を踏まえて会員増強特別委員会で再度検討し、次回の理事会で再議されることとなった。
 2002年度JlA新人賞要項の件は、3人の審査員の交替を含めその募集要項が承認された。

 協議事項では
 2008年UlA大会東京誘致の件は、3月31日までにUIA本部に提出する大会テーマ、大会日程、参加人数、上納金とも言えるUIAへの50万ドルの納入スケジュールを含む財務計画が説明された。最終的には2月の理事会に報告される予定である。また同時に今回もUIA学生コンペヘの5千ドルの賞金提供協力の要請に応ずることが報告された。
 2001年度理事会開催スケジュールの件は、2002年の理事会と支部長会議と企画運営会議の日程変更が発表された。これで昨年5月の村尾成文会長の辞任発言以来懸案となっていた会長職の完投の目途がついたようで任期途中での会長の辞任はなくなったと考えてよいのではなかろうか。それにしてもやはりもう少しきちんと説明がなされてもよかったのではないかと思った。
 CPD完全実施の件は、CPD(試行)評議会とCPD運営委員会からCPD試行(2000年・2001年両年度)の成果を踏まえた2002年度からのCPD推進に向けての課題点に関する報告と提案と題した10項目からなる答申を受けた。鬼頭梓CPD(試行)評議会委員長は、来年度完全実施を前にとくに理事会に確認したいこととして次の3点を強調された。@CPDの義務化と会員資格の関係の整理A記録システムの構築と財務処置Bプロバイダーと登録料の取り扱いの結論を出すこと。引き続き協議に入ったが、冒頭、CPDと建築家資格制度の関係をはっきりさせる必要があるとの浅田近畿支部長の発言に対して、大宇根CPD運営委員会委員長は「CPDはJIAの会員資格として位置づけている」。また鬼頭CPD(試行)評議会委員長は、「本来CPDはJIAの主張している建築家資格制度の要件の一つであるが、今やJIAの会員資格としてのCPDと考えている」と主張された。村尾会長からは
「2000年度の事業計画を審議したときに建築家資格制度の実現とCPDの実施を同時に決議したので、会員の中には同時進行と考えている人がいるようであるが、実際には資格制度は他団体とのかかわりもあり時間もかかるので、それぞれ別の問題として扱うということの説明が必要のようである」との説明があった。協議での各理事・支部長の発言の要旨は次の通りであった。
 清水公夫東北支部長は、「CPDと建築家資格制度は切り離して考えているので、CPDは単独で実施する。また会員はCPDを必ずしも理解していないかもしれないが、実施すれば参加するのではないか」。
 私は「JIAの建築家資格制度は1997年の素案と確認したうえで、CPDの完全実施を主張、CPDはJIA会員の踏み絵と考えている。そのうえ他団体がその成り行きに注目していることを認識すべきである。資格制度はJIAだけでは考えられないところにきており、まだ少し時問がかかるので資格制度の要件ですぐに実行可能なCPDや実務訓練をすすめる姿勢が大切である」ことを主張した。
 清水九州支部長からは、「2年間の試行で周知度は1/3である。せめて1/2になってからのスタートがよいのではないか。したがって、試行期間を延長してはどうか」。
 坂本克也副会長からは「CPDは会員資格と考えてよい。取得単位数と会員資格のことは2005年までにPRしながら実施すればよい」。
 田中北陸支部長は、「3年後に問題発生が予測されるが、これにはきちんとした準備が必要であることと、会員増強にCPDが有効である」。また「CPDを実施すると多分会員数は減るであろうが、現会員のなかで退会者が出てもCPDは実施すべきである」と主張。
 服部関東甲信越支部長は、「CPD参加者資格の喪失を即会員資格の喪失にするのか、ま
た人数の多いところでは地域会ごとのCPDの実施はむずかしい」。
 浅田近畿支部長は、「試行期間が続けば、おそらくいつまでも1/3の周知度であろう。決めればやるのではないか」。
 上田四国支部長は、「CPDと資格制度は連動するものと思っていた。飴もあるから鞭もあるのではないか。全国どこでも可能な方法を考えるべきである。単位数は20単位ぐらいがよいのではないか。またプロバイダー認定は地方に任せてほしい」などの提案があった。
 村尾会長からは「2年の試行の後のCPDの完全実施に反対する人はいないと思うが、そこに至るプロセスに少し工夫が必要かもしれない。先行している近畿支部の知恵を借りたい」とのことであったが、どんな知恵があるのか。近畿支部の実状はまったく知らされていないので何とも判断しがたいところである。以上でCPDに関する協議を終えた。
 最後に村尾会長から金沢大会開催について、田中光JIA北陸支部長、水野一郎JIA大会2001金沢実行委員会委員長と、細川紀彦金沢市民芸術村村長にそれぞれ感謝状が手渡され、JIAとしての謝意を表明して理事会は終了した。(2001・12・31)