保存情報第11回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 旧昭和塾堂 福田一豊/ (株) 大建設計
■発掘者コメント

 名古屋市の末盛通2丁目交差点に近い末盛通りの北側に、 望楼だけが森の上に浮かんで見えるのが旧昭和塾堂です。 私は以前から城山神社を訪れるときに、 ふと目に入るこの建物に興味を覚えていましたが、 とくにどういう建物であるかを調べることもなく時が過ぎていました。 JIA愛知の保存研究会が発足した折、 林委員長に尋ねて初めて詳細を知ることができました。 最近でこそ新聞でも取り上げられ、 いろいろと話題になってきましたが、 それまでは忘れられた存在であったように記憶しています。
 この建物は建屋の中心に配置された4層八角形の望楼風の塔を中心に、 入母屋屋根の2層の建物が3方に延び人字形をしています。 近代洋風の建物に日本調が加味されたもので、 青少年の社会教育のための施設として、 愛知県が全国に先がけてつくったもので、 この後に建設された名古屋市庁舎や愛知県庁舎の洋式の先駆となった貴重なものです。 構造は鉄筋コンクリート造です。  現在城山八幡宮が管理保有していて、 愛知学院大学の歯学研究棟として使われていますが、 やや傷みが進行しています。  この城山界隈のシンボル的建物として保存活用され、 町の魅力アップになることを願っています。

所在地:名古屋市千種区城山町
2-90城山八幡宮境内
建設年:1929年 (昭和4)
交通機関:地下鉄本山駅より徒歩10分

登録有形文化財 郡上八幡楽藝館 (旧林療院) 水野 威/ (有) ミズノ設計室
■紹介者コメント

  「林療院」 は1904年 (明治37)、 医師林吉蔵氏によって建築、 同年開業。 1996年 (平成8) まで約90余年、 親子2代、 そしてまた明治、 大正、 昭和、 平成と4代にわたり、 郡上八幡の医療施設として歴史を歩んできた。 城下町から近代都市へ移り変わってきたこの町の記憶を今にとどめるようで、 かけがえのない貴重な建築物となっている。
 本館は木造2階建、 トラス組寄棟造り、 大壁造り漆喰塗、 玄関ポーチにみられるイオニア式の柱や玄関ドア上部の半円形の窓、 各室の窓飾りやステンドグラスなど、 随所に明治の西洋建築の香りが残っており、 当時はさぞかし行きかう人々の目を引き付けたことと思われる。 別棟のレントゲン棟 (県下で初めて使用されたレントゲンや棟飾りも貴重) や看護婦棟 (石材を活用した足軽屋敷) もその時代の香りを現代に残している貴重な建築である。
 林家より1997年 (平成9) に寄付された後、 本館は旧林療院記念館、 レントゲン棟は旧林療院記念館レントゲン棟、 看護婦棟は町方文化資料館に、 その他、 町民展示室、 郡上画廊も併設され、 郡上八幡楽藝館として、 地域の歴史伝統の保存と文化・教育の発展の活動拠点として2000年に改修され、 現在は一般公開されている。 城下町散策の折にはぜひお立ち寄りを。 (参照資料 「郡上八幡楽藝館の由来」)  
所在地:岐阜県郡上郡八幡町島谷字左京789-1
建設年代:1904年 (明治37)
登録番号:第13回417番 第14回441番