2003年までの文章は雑誌からスキャニングして作成しておりますので、誤字がありましたら申し訳ありません。
又、写真は今後スキャニングして挿入させていただきます。

ロボット好きの日本人 第4回

若者を惹きつけるロボットコンテスト
末松良一
(名古屋大学大学院工学研究科教授)
ロボットコンテストブーム
 日本人のロボット好きを示す社会現象の一つとして、ロボットコンテストブームが挙げられる。「ロボット相撲」「マイクロロボット」「サッカーロボット」など定期的に開催される競技会も枚挙にいとまがない。今回は、二つのロボットコンテストを例に、その魅力の背景について述べてみたい。
図1 競技フィールド 図2 計量中のアタックアーム(富山商船)
アイデア対決・高専ロボットコンテスト2000
 全国の高等専門学校の全校が参加し、地区大会、そして全国大会をめざして多くの高専生が挑戦を続けている。私は、たまたま、今年度の東海・北陸地区大会の実況解説をする機会を得たので、間近で高専生たちの活動ぶりを知ることができた。
 2000年度の課題テーマは「ミレニアムメッセージ」であった。スタートエリアからロボットが移動して、高さの異なる4本のポールの上にそれぞれ造形物を置き、その造形物によって21世紀へのメッセージを表現するパフォーマンスを行なうという課題である。
 図1をご覧いただきたい。1m四方のスタート位置から、ロボットが走行し、8mほど離れた位置に立てられた4本のポール上のスポットに4個の造形物を置くまでは、スピードを競うタイムトライアルである。次に、スポット上の造形物によって、21世紀へのメッセージを表現するパフォーマンスを10秒以上行なうことを規定時間内で競うのである。
 今年の課題の特長は、高さが150cmから240cmと異なるポール上のスポットに、造形物をいかに早く置くかという技術的課題に加えて、ミレニアムメッセージの表現力、観客へのアピール性など、感性を問う課題が与えられたことである。
図3 トライアル中のテッペンジャック(豊田高専) 図4 テッペンジャックのVサイン
高専生の課題解決への取り組み
 全国の高専に対して、その年のロボコン課題が示されるのは6月初めである。高専生は、与えられた課題をいかに解決するかのアイデアを書面で提出し、参加申し込みを行なう。各校から2チームが参加できる。東海・北陸地区大会も年々盛んになり、今年もすべての工業高専、商船高専10校20チームが参加を申し込み、11月5日の大会に臨んだ。
 4本のポール上に造形物を置くという技術的課題の解決方法もバラエティに富んでいた。
@ロボットがはしごを登って、はしごの上からスポットに造形物を置く方法、A造形物を持った4台の子機がそれぞれポールを登って造形物を置く方法、Bスタート位置からスポット目がけて造形物を飛ばす方法、そして、Cロボットが4本のポールを跨ぐほどの大きさに変身して、上から造形物をおく方法などさまざまな機構を用いているのには、驚かされた。
 富山商船のアタックアームチームは、木製星形の歯車を使ってはしごを登っていくロボットで、はしごの頂上から腕が4本伸び、高さが異なるスポットに造形物を置く機構である。伸びた腕がスポットに向かって移動するようすが、白鳥が羽ばたく姿を連想させ、非常に美しいマシンであった。このマシンは、大会前日のトライアルでは見事に作動したが、本大会では、はしごの頂上でのロボットの固定がうまくできず、美しい姿を見てもらえなかったのは残念であった。
 東海・北陸大会で今年優勝した豊田高専のテッペンジャックは、スタート位置では、1メートル立方の大きさだったロボットが、走行ゾーンで幅2m高さ3m近くの大きな門形ロボットに変身し、4本のポールを跨いで上から造形物をスポットに置くという独創的な機構であった。
 ミレニアムメッセージの演出についても、高専生はさまざまな思いを表現した。環境問題を取り上げ、恐竜、絶滅の動物、植物の芽生えを示したもの、宇宙開発計画の夢を表現したもの、20世紀の出来事を表現したものなど、また、表示方法も電光板やプリンタ出力などさまざまであった。豊田高専のテッペンジャックは、一番高いポールに置かれた造形物が送風機から送られた空気により5mほどのVサインを示すビニール風船となり、見るものを圧倒した。
 舞台裏に設けられたピットでは、持ち込んだそれぞれのロボットの最後の調整作業が行なわれ、終止、熱気に包まれていた。狭いスペースで必死になって作業を行なっている高専生らは、真剣そのものであり、彼らの熱い思いが見ている側にも伝わってきた。
 高専のロボットコンテストは、地区大会、全国大会ともに毎年NHKテレビで放映され、好評を博している。
 高専ロボコンとは別に、第8回全国高等学校ロボット競技大会「ロボット魚つり大会2000徳島」も開かれ、42都道府県の192台のロボットが参加した。さらに、創造アイデアロボコン全国中学生大会も今年度から新たに企画され、九州地区を中心に66チームが参加した。
図5 トヨタロボットバトルの競技コース 図6 煙突登りに挑戦するロボット
トヨタアイデアオリンピック2000
 トヨタ自動車のアイデアオリンピックは、昨年までは、夢の自動車を形にするコンテスト形式であったが、今年度は、参加意欲の向上を図ってバトル色が強いロボットコンテストに一新された。プロフェッショナルの技術者が挑戦する、8種類の超難関課題は次のようなものだった。
@バリケード突破 D壁越え
Aロープ渡り    Eネット登り
B煙突登り     F丸太渡り
C扉上げ      G飛び石渡り
 いかに規定時問内に多くの課題を克服できるかのアイデア勝負である。重さ4sから68sのさまざまな形態のロボット19台がこの超難関課題に挑戦した。
 「煙突登り」は、直系60cm程の垂直円筒を2mほどの高さまで登るという課題で、尺取り虫方式、登山ロープ方式、はしご方式などさまざまであった。
 もっとも克服が困難であった課題は、「ネット登り」であった。遊園地などで見かけるロープ網を登っていくものだが、ネットが揺れることによって、ロボットの足場が不安定となり思うように登れないロボットが多かった。しかし、参加した19台のロボットの中で、3台のマシンが8つの超難関課題を克服したのは、さすがプロフェッショナルの大会だと感心した。