この文章は雑誌からスキャニングして作成しておりますので、誤字がありましたら申し訳ありません。

保存情報 第1回 林廣伸/保存研究会委員長
1998年(平成10)2月に登録有形文化財となった愛知県庁本庁舎(手前)と名古屋市役所本庁舎
 本号から「都市寸景」に代わり、JIA愛知保存研究会が担当する「保存情報」のコーナーを新設することとなりました。保存研究会の会員は現在27名ですが、順次持ち回りで執筆していきたいと考えています。よろしくお願いします。
 さて、JIA愛知保存研究会は1999年2月の地域役員会での承認を受けて発足し、昨年の4月から平成12年度の活動を開始しました。以来偶数月に例会を開催し、徐々にではありますがその活動の活性化を計っています。また、奇数月には翌月例会の打ち合わせや活動内容等を検討するために幹事会ならびに担当スタッフ会議を開催しています。
 これまでの活動としては、
 4月例会総会(平成12年度活動内容検討)
 6月例会見学会(龍興寺・中央三井信託銀行) 本誌2000年9月号既報
 8月例会講演会(瀬口哲夫氏) 本誌2000年10月号既報
10月例会研究会(町並み保存)
12月例会報告会(データ発掘)・忘年会等を行なってきました。
 年度を通しての保存研究会の活動としては、12月例会で報告された「データ発掘」があります。これは、会員一人ひとりにとって大切な、身近にある歴史的環境を発掘し、データシートにまとめる作業で、データの集積を計っていこうと考えています。いわば、「街角文化財」を拾い集めようというわけです。
 まずは本誌上で一人1点ずつを紹介していただくことにしました。多くの事例の集積が進めば、いろいろと活用方法も生まれることと思われます。ただ、個々人の固有の価値付けであるという観点から、BEST10のような形は取らないつもりでいます。
 もう一つは、東海地区にある「登録有形文化財」の紹介です。1996年(平成8)文化財保護法が改正され、新しく文化財登録制度が発足し、これまでに全国では1,874件、東海4県で167件、愛知県下では43件(いずれも2000年4月現在)の登録有形文化財が誕生しています。
 文化財登録制度は、その対象として近代まで含んでいるため、従来の重要文化財等の指定制度だけでは保護を計りきれない部分を補完する意昧もあり、所有者の自主性に基づく届出制をとるものです。「多種多様で大量に残る近代の建造物(土木構造物を含む)を巾心とする歴史的建造物を保護することを主たる目的」としていますが、近世も含み広く文化財の存在を確認するものと言えます。
 登録有形文化財の登録基準は、建設後50年を経過したもので、
@国土の歴史的景観に寄与しているもの
A造形の規範となっているもの
B再現することが容易でないもの
となっています。もう一点所有者の同意が必要となります。厳しい条件のように感じられますが、文化庁としては数多く(将来的には25,000件)の建造物をリストアップし、その保存の端緒とすることも狙っていますので、所有者本人の同意と築50年以上の条件さえ満たされれば、おおむね登録可能と判断してよいようです。前述の「データ発掘」の作業も、実は密かに登録有形文化財に結びっかないかと考えています。
 登録されると登録証とプレートが交付されます。登録有形文化財となった場合、外観保存の制約(外壁改修は1/4以下)はありますが、内部の改築等については制限がありません。このことは、文化財の積極的な活用を促し、歴史的・文化的資産を顕在化させることにも配慮したためです。
 また、重要文化財のような手厚い補助ではありませんが、
@固定資産税の軽減
A地価税の軽減
B日本開発銀行等の低利融資
C保存修理にかかる設計監理料の1/2補助
等の支援制度があります。
 以上の「データ発掘」と「登録有形文化財」の2部構成で「保存情報」を次号より掲載する予定です。「文化財」や「保存」は特異な世界と考えられがちですが、「保存情報」を通して、身近な歴史的環境を見っめ直す契機になればと考えています。
 なお、「データ発掘」は一般会員の方の参加も歓迎いたします。また、登録文化財についてのご質問、保存研究会への入会も随時受け付けていますのでJIA事務局あてにご連絡下さい。