リレー連載  暮らしと環境 第6回
生ゴミ処理の急速なる進化
今井田 崇
千明・バイタルプラネット
 1997年に制定された環境アセスメント法も1999年6月より新環境アセスメント法として実際に施行されたことや、同年から実施された容器包装リサイクル法などの点から見て、まだまだ欧米先進諸国に遅れを取っているわが国の現状であります。しかしながら、急速な環境改善活動が高まっており、さらに加速して官民一体となっての本格的ゴミ問題への取り組みが行なわれていかなければならない状況です。したがってここに簡略的ながら、その方向性を見いだし、生ゴミの処理すべき思考を判断せしむ提案をいたします。
1.日本行政の方向性
a)循環型ゴミ行政への転換…リサイクル重視
b)事業ゴミの有料化および家庭ゴミの有料化
C)自治体や市民のゴミ減量化作戦の実施促進
 その背景には、環境アセスメント法・リサイクル法があり、マスコミを利用した国民へのゴミ削減の意識付けなどがあると思えます。
〈環境アセスメント法の意義〉
 日本語で「環境影響評価法」…これは行政または事業者の新設事業が環境にいかに影響を及ぼすかという評価を地域住民が行ない、住民側のデータを行政側で吸い上げた上で施行に取りかかるという基準法律です。
〈容器包装リサイクル法の意義〉
 これは産業廃棄物に属する4種類(無色、茶色の各ガラス容器、その他の色のガラス容器、ペットポトル)の再商品化義務の法律で、それ以外の一部の物は社会通念によって判断されます。基本的に分別収集の促進とゴミ減量を直接的にマッチさせた方策としていることに意義があります。これは特定事業者に当てられる責任比率が90%以上と高く、今回のテーマの対象外ですが、今後、ゴミ発生防止のために、事業責任の度合いがいかに高まっていくかという洞察をもって紹介いたします。
 総括して、今後はいかに生産者側に対して、ゴミ発生を抑制し、その意識、定義をもって有料化を促進し、最終的には一般廃棄物を含めすべての発生するゴミに対する責任を有料化していく方向にあることを裏付けていると思われます。
2.生ゴミの絶対量とその推移
 近年では排出されるゴミの量は一定化してきましたが、累積量は想像を絶する量となっており、実際には政府でも把握しきれない状態と思われます。
 公称値としては、過去5年問平均で一般廃棄物年問5,000万トン(内容器包装60%)、産業廃棄物年問約4億トンといわれ、産業廃棄物の処分場残余容量について推移、一般廃棄物のそれについても推して知るべしの状況です。同じゴミ排出量と、再利用プラス最終処分場の差を見ても歴然としていますが、年々増加するゴミ量に対し、先の環境アセスメントの影響も含め、処分場の処理量はほとんどゼロに近づくことを考えれば、自己処理量を増やす必要性は当然発生してくることがわかります。
※家庭からのゴミ…1990年〜96年で平均1,300g強/日(京都市) 全国平均で1,100g/日(平均5年データ)
3.コンポスト化の行方と消滅型(分解)処理機の価値
 一般廃棄物巾の包装容器を除く生ゴミのうち、植物性・動物性残渣は35%を占めており、絶対量では700〜800万トン/年排出されています。身近なゴミ処理としてコンポスト化する動きが数年前から始まっていますが、堆肥化する量はまだまだかなり少なく、1割に満たない状況です。
a)堆肥を市販取り扱いする企業が少ない
 ・行政の特定業者として認められない限り企業利益が見込めない
 ・生ゴミも回収業者扱いは、都巾近郊では現在平均45円/kg程度と高騰している。…ゴミ有料化により、排出量を減らす方向
  堆肥利益はO.5〜1円/kgと非常に少ないため、ゴミ有料化が業者の足を引っ張り、事業として普及性が低い。
b)堆肥そのものの内容が、それぞれの環境の違いやコンポストヘの投入物が不確定で、本米の十としてのミネラルバランスが改善または維持されるとは限らない。…100%は肥米斗にならないため、活用度が低い。端的に塩害などの問題が各地で発生している。
C)堆肥型処理機が普及すると、余った堆肥が増加し、二次的処理が必要になる可能性が高い。
d)コンポスト処理機のメンテナンス経費がかかることと、二次的処理などのランニングコストが高くつく。
 ※ゆえに、根本的に行政を含め、事業者側の責任でゴミ減量化をはかり、自己処理が可能な製品を望み、自然の摂理にともなう処理が行なえることが理想である。
4.生ゴミ処理機の商品化に成功するには…
1)触媒・酵素・バクテリアの能力を把握する必要がある
2)幅広い環境、とくに温度変化に対応できること
3)油・水分の過剰にも対応できること
4)対象物を選ばない幅広い使用ができること
5)短期間で能力を発揮するものであること
6)取り扱いが安全で容易、保存が長期間可能なこと
7)安定供給ができ、経済的であること
※処理機の巾で好気性微生物を最大に発生させる処理物を分解させるためには、処理機の巾の微生物環境@温度A湿度BPHC酵素量等がもっとも大切であり、微生物の生態形態も理解せずに勝手な想像力で特定の菌群を投入することにも問題があると思われます。たしかに、細菌がPCBを分解するとか、合成ポリマー・農薬・石油・ダイオキシンを分解する微生物まで発見されていますが、まだ地球全体の1〜5%しか解明されていません(例:石油分解菌…ハロモナス属、PCB…ロマモナステストステロニなど)。
5.進化が生み出した多種多様の微生物
・海の誕牛→有機物の合成→牛命の誕生(40億年前)→嫌気性細菌の出現→ラン藻の出現(酸素の放出)→真核生物の出現(カビ・アメーバ等)→大型藻類→進化
※無機物の硫黄を酸化してエネルギーを獲得し、二酸化炭素の固定によって自ら有機物を合成→嫌気性細菌
※光エネルギーによって水を分解して水素をエネルギー合成に利用し残った酸素ガスを放出→好気性微生物
 〈土の中の微生物〉
1gの土壌に約10億個
@70〜75%はカビ
A20〜25%は細菌
B5%以下は土壌動物
※カビがもっとも多いのは、カビは水分の乏しい場所でも増殖できるし、分解がやっかいなセルロース・ヘミセルロースやリグニンなどの多糖類も分解する能力に優れているからです。腐朽には以下の3種類があります。
@褐色腐朽…担子菌
A白色腐朽…担子菌・子のう菌
B軟腐朽…子のう菌・不完全菌
上記の@Bはセルロース・ヘミセルロースを分解する。Aはリブニンも同程度に分解できる。通常、山の巾で老木が分解されるのに約7年かかり、北海道のような寒冷地では100〜200年かかる場合もあるが、逆にアフリカなどでは1年で分解される。これはまさに温度(気候風土)等の違いで起こる臼然界の分解スピードの差を表していると思います。
 〈微生物のエサは何か〉
@微生物のカロリー獲得→活動のためのエネルギー
A栄養分の獲得→細胞成分の合成
※微生物はエネルギー獲得に無機物・光・有機物を使う
・無機をエネルギーにする微生物 アンモニア酸化細菌・亜硝酸酸化細菌・イオウ酸化細菌等
・光をエネルギーにする微生物
・有機物をエサにする微生物
・酸素が必要な微生物 呼吸系=多くの細菌・ラン藻・放線盲カビ・原生動物微小藻類など
・酸素があってもなくてもよい微生物 絶対的嫌気性菌・耐気性嫌気性細菌・条件的嫌気性細菌
※以上のように、さまざまな条件の中で生きている微生物は、21世紀の地球環境を守り、改善し、地球を救う主役となることは間違いありません。
6.まとめ
 以上のことより、今後さまざまな生ゴミ処理機が登場し、さらに進化を遂げると予測されながらも、今まさに根本的ゴミ削減に協力するものは、できる限り、微量元素にまで分解する処理機が必要であるといえるのではないでしょうか。生物体も合成化学物質も元は元素の集合体ですから、そのレベルにまで分解すれば、地球や生物に対しても大きな負担がかりません。私たちは、大切な資源をゴミという形にし、さらにこれに多大なお金をかけて処理し、そのツケが環境汚染、あるいは環境破壊という形でじらにも大きな負荷として降りかかってきています。かかる現状から、私たちは、毎口排出される廃棄物をゴミとして見るのではなく、あらゆる方向から資源として見て、対応していく必要があるのではないでしょうか。私どもは地球に負荷のかからない、良質で利用価値の高いものに作り替えて再資源化(例:高分子土壌改良材など)することも目的として廃棄物処理の研究をすべきだと思います。そんな分解装置…元素にまで分解することから、再資源化となり、さらに多くのものが減容量化することから、見かけ上、消滅状態になるので、従来の問題点を解決する究極の処理機と位置づけられると考えます。